Z世代マーケティングの必要性とは?若年層の特徴に基づく企業戦略と成功事例を紹介

最終更新日:2025-06-06作成日:2025-06-04

「Z世代」はこれからのビジネス展開を大きく左右する重要な存在です。ただ、Z世代はデジタルに慣れ親しんだ世代であり、それより年齢が上の層とは考え方や価値観が異なるため、従来の戦略では通用しないかもしれません。

今回の記事では、Z世代マーケティングの必要性と特徴的な共通点を踏まえた戦略設計のポイント、成功事例でよくみられる施策例を紹介します。

Z世代とは

まず、Z世代とはどのような階層なのか確認していきましょう。

Z世代の定義

「Z世代」とは、1990年代後半〜2010年代前半の間に誕生した人々の総称です。アメリカで上記の年代が「Generation Z」と称されていたことに由来します。

Z世代は、生まれたときにはすでにITが身近にありました。そのため、インターネットやモバイル機器との親和性が高く、不特定多数への情報発信やシェア、コミュニケーションに抵抗がありません。

Z世代とY世代の違い

Y世代とは、1980年代〜1990年代半ば頃にかけて誕生した人々の総称です。2000年代以降に成人を迎えることから「ミレニアム世代」とも呼ばれます。カナダ出身の作家ダグラス・クープランド氏の著書『ジェネレーションX―加速された文化のための物語たち』で、一つ前の世代のX世代とともに紹介されたことで広まりました。

Y世代は別名「デジタルパイオニア」と呼ばれる世代です。Z世代と同じく、生まれたときからインターネットが身近に存在します。しかしY世代は、不況や就職氷河期、携帯電話からスマートフォンへの変遷を経験したことで培われた価値観を持つ点がZ世代との大きな違いです。

企業にZ世代マーケティングが必要とされる理由

現代の企業戦略においてZ世代マーケティングが重視されるのは、主に次の2点を理由としています。

  • 市場におけるウェイトと将来的な可能性が大きいから
  • 従来とは異なる購買行動モデルを持つから

市場におけるウェイトと将来的な可能性が大きいから

Z世代マーケティングが必要なのは、人口に占める割合の多さを踏まえた将来的な可能性の高さによります。世界における2022年時点でのZ世代の人口は、全世代中で最も多い割合となる約24%です。人口全体の3分の1近くを占め、将来的に世界の消費をけん引する世代となることが予想されています(出典:【報告書】令和3年度コンテンツ海外展開促進事業(Z世代におけるeスポーツおよびゲーム空間における広告価値の検証事業)|KPMGコンサルティング株式会社|経済産業省)。

国内人口に占めるZ世代は、2022年時点で14.4%と、全体を占める割合としては多くはありません。しかし、X世代の減少や少子化が進む見込みであることを踏まえると、将来的に市場全体でZ世代の影響力が増していくと考えられます(出典:消費生活の未来に関する調査報告書|消費者庁)。

従来とは異なる購買行動モデルを持つから

Z世代の購買行動には、従来にはない特徴があるといわれています。その新しい購買行動モデルを「EIEEB(イーブ)」といい、次の5つのプロセスで構成されています。

  • E(Encounter:出会い):自身の価値観と合う商品・サービスと出会う
  • I(Inspire:感化):商品・サービスの魅力に共鳴して感化される
  • E(Encourage:後押し):信頼できる情報を集め意思決定の判断材料にする
  • E(Event:購入):自身にとって最も魅力的な方法・場所を選んで購入する
  • B(Boost up:情報共有):体験や感覚を不特定多数と共有し合う

すべての過程において重視されるのは「ときめき」です。一連の購買行動を自身にとっての特別な体験と見なし、ときめきを感じられるかどうかが重視されます。さらに、そのときめきを多くの人とシェアし、高め合いたいという欲求を持つことも、従来の個の欲求を主体とする購買行動モデルとは異なるポイントです。つまりZ世代マーケティングでは、従来とは異なるカスタマージャーニーを踏まえた戦略設計を要します。

Z世代の特徴を表すキーワードとマーケティング戦略設計のコツ

ここでは、Z世代の特徴的な考え方だといわれる8つの概念と、それを踏まえたマーケティング戦略設計について解説します。

デジタルネイティブ

Z世代最大の特徴ともいえるのが「デジタルネイティブ」。総務省が2023年に実施した調査によると、13歳〜23歳におけるSNSの利用者の割合は9割超でした。また、そのうち63.4%の人がSNSの利用目的を「知りたいことについて情報を探すため」と回答しています(出典:令和5年通信利用動向調査の結果|総務省)。

したがってZ世代マーケティングでは、従来のインターネット検索対策にくわえ、いかにSNSを使いこなせるかがポイントです。SNSを通じてトレンドを押さえた情報や投稿を発信することで、多くの注目が集められ、大きな拡散効果が期待できます。くわえて購買意欲が刺激された際、それが冷めないうちに購入できる導線づくりも欠かせません。

パーソナライズ志向

Z世代マーケティング戦略の重要なポイントとなるのが「パーソナライズド」です。Z世代のユーザーが生まれたときにはすでに、グローバル化の進展とともに価値観が多様化し、個性を重視する時代が到来しつつありました。そのためZ世代は、インターネット上で出会う多種多様な人種や文化、ライフスタイルの違いを受け入れる精神が生まれながらに培われています。違いを認め合うからこそ、共感や同調、体験といった商品・サービスの値段や質とは異なる価値観に重きを置き、それを基に購買の意思決定を行っているのです。

つまり、Z世代マーケティングでは、一人ひとりの好みや志向を踏まえてパーソナライズした「エモい」戦略設計が重要です。また、従来のように機能性や安さを重視する価値観とは異なり、その背景にある理念や思いといったストーリー性を活かしたマーケティング戦略が求められます。

コト・トキ消費

多彩な商品・サービスがあふれかえる現代に生まれたZ世代は、ほどほどの生活に満足感を覚えているといわれています。「安くてよいモノ」「新しいモノ」が手軽に入るため、消費の対象が従来の「モノ」から「コト」や「トキ」にシフト。商品サービスの質や価格、単なる新しさなどではなく、それによって得られる体験や、これまでに見たことのない希少性へ大きな価値を感じています。

またZ世代は、インターネットやSNSを介し、自身や他者の体験を共有するスキルに長けた階層です。そのため、多くの若者がイベントや体験における一体感を重視し、そのときでしか味わえない、限定的かつ非再現性の高い「トキ」に魅力を感じる傾向にあります(出典:令和4年度版 消費者白書|消費者庁)。ゆえに、非日常や特別感をリアルタイムで味わえる体験の提供が求められるでしょう。

タイパ重視

Z世代を中心とする若者文化で重視される価値観や購買行動の指針となっているのが「タイムパフォーマンス」です。タイムパフォーマンスとは「時間対効果」と訳され、費やした時間に対してどれくらいの成果や効果が得られるかという対比を指します。

ひと昔前は「コストパフォーマンス」に優れる商品を好む傾向にありました。しかし、膨大なモノ・コトに囲まれることに慣れたZ世代は、必要な情報や目的へいかに効率よくたどり着けるかが重要な判断基準です。「ショート動画」「倍速視聴」「ながら見」などがトレンドとなっていることからも、タイムパフォーマンスの重要性が伺えます。つまり、ムダを削ぎ落とし、要約したシンプルな商品・サービス設計や、それを購入する導線設計を徹底することがポイントです。

エシカル

「エシカル」とは、人や社会、環境への貢献に積極的な姿勢を表す用語です。Z世代は、国内における環境意識を高めるきっかけともいえる京都議定書が採択された1997年ごろに生まれました。幼少期から環境・社会問題やSDGsに関連する教育を受け、自分ごと化する学びを得ていることから、高い当事者意識を持っているといわれています。実際に、日本労働組合総連合会が2022年に実施した調査によると、Z世代の約9割が社会課題に関心を持っていると回答しました(出典:Z世代が考える社会を良くするための社会運動調査2022|日本労働組合総連合会)。

そのため、Z世代はほかの世代と比べ、環境問題や人種差別といった社会問題に対する当事者意識が醸成されている傾向にあります。社会問題への関心の高さは購買行動にも影響を与えるので、エシカルを反映させることで、Z世代に刺さるマーケティング戦略が立案できるでしょう。

アーリーマジョリティ

SNSでの情報検索・発信力に長けるZ世代は、トレンドへの感度が非常に高い傾向です。「イノベーター理論」における「アーリーマジョリティ」の傾向が強く、メディアやSNSで流行しているモノ・コトを早い段階で取り入れます。その一方で、情報リテラシーが高く、購買の意思決定に慎重な面を併せ持ち、リスク回避のため商品・サービスの信頼性を重視する傾向がみられます。企業の宣伝広告や情報発信にはバイアスがかかっていることを理解しており、鵜呑みにはしません。

したがってZ世代マーケティングでは、その時々で変化するムーブメントをいち早くキャッチするとともに、信頼性の向上が課題となります。鮮度が高いトレンドを取り入れた商品・サービス設計や情報発信、Z世代ユーザーから信頼を寄せられる存在を起用したPRがポイントとなるでしょう。

サブ垢勢

Z世代におけるSNSの活用法の特徴として、複数のSNSやチャネルを併用する、いわゆる「サブ垢勢」は多いことが挙げられます。サブ垢とは、サブで利用するアカウントの俗称です。SHIBUYA109 lab.が2023年に行った調べによると、Z世代は1人あたり2.3個のアカウントを併用していることが分かりました(出典:Z世代のスマホに関する意識調査|株式会社SHIBUYA109エンタテイメント)。メインとなる「本垢」のほか「裏垢」「趣味垢」などさまざまなサブ垢を使い分けています。

こうした特徴踏まえると、企業・法人においても自社商品・サービスと相性のよいSNSを選定するとともに、複数チャネルで運用することが大切です。散らばったチャネルを一つのテーマの下に統合し、連携・連動させることで、より効果的なマーケティング戦略が実現します。

広告嫌い

Z世代は、インターネット広告を利用した過剰な売り込みに抵抗感を覚える傾向にあります。株式会社ペンマークが2023年に発表したリサーチ結果によると、SNSなどに表示される広告に対してネガティブな感情を持っているユーザーが多数派です。その大多数が何度も表示される広告をしつこい押し売りのように感じ、不快感を覚えると回答しています(出典:【Z世代広告意識調査】デジタル広告の印象、約6割が好意的でない※|株式会社ペンマーク)。

したがって、Z世代マーケティングのポイントとなるのは、ささやかながら確かな信頼感のある宣伝です。確実なデータに基づく情報やUGCコンテンツといった無理な誇張のないPRを行うことで、Z世代からの共感が集められるでしょう。

Z世代をターゲットにしたマーケティング施策と成功事例5選

ここでは、Z世代マーケティングの成功事例においてよく活用される5つのマーケティング施策を紹介します。

ショート・ダイジェストムービー制作

ショートムービー制作は、タイムパフォーマンスのよい短尺動画や倍速動画を好むZ世代にうってつけのマーケティング施策です。要点を絞って短尺でコンパクトにまとめたり、倍速視聴に対応した仕様にしたりすることで、Z世代向きの短時間で効率よく情報が集められるコンテンツとなるでしょう。

◾️事例紹介

損害保険ジャパン株式会社の事例

SNSキャンペーン

Z世代による情報のシェアを増やすには、SNSを介したキャンペーン企画をおすすめします。キャンペーン成功のコツは「トライブ」を意識した企画設計。トライブとは、共通の興味・関心や趣味を持った集団です。Z世代は無数に存在するSNSのトライブへ積極的に参加している傾向にあり、その中で話題になりやすい企画を設計することで、キャンペーンの成功率がアップします。

◾️事例紹介

株式会社マンダムの事例

インフルエンサーマーケティング

Z世代からの認知度や注目を高めたいときは「インフルエンサーマーケティング」が有効だといえます。インフルエンサーマーケティングとは、SNSで多くのフォロワーを抱えるユーザーに自社商品・サービスの情報発信を行ってもらうマーケティング手法です。インフルエンサーといったZ世代からの高い信頼性を勝ち得ている存在に協力を仰ぐなどの工夫で、信用度の向上が狙えます。

◾️事例紹介

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の事例

UGC・口コミマーケティング

Z世代を効果的に取り込むには、UGC(ユーザー生成コンテンツ)や口コミの発生を促す戦略が推奨されます。スマートフォンやインターネットに慣れ親しんだZ世代を対象とするUGC・口コミマーケティングのポイントとなるのが、体験や感想をシェアしたくなるような企画の立案です。基本的に、UGCや口コミの発生は、企業がコントロールできるものではありません。キャッチーな投稿や丁寧なコミュニケーションなどでシェアしたくなる仕組みをつくれば、ファンがファンを連れてくるというよい循環が生まれます。

◾️事例紹介

江崎グリコ株式会社の事例

UGCとは?意味やマーケティングでの重要性、企業の成功事例を解説

UGC(User Generated Content)は、消費者の信頼を得ながらブランド認知や購買促進につなげる強力なマーケティング手法です。本記事では、UGCの意味や種類、企業の成功事例、導入時の注意点を解説します。SNS時代に欠かせないUGCを効果的に活用し、ビジネス成長につなげましょう。

参加・体験型イベント企画

購買における価値観が「モノ消費」から「コト消費」にシフトしつつあるZ世代の心をつかむには、体験や経験を重視したマーケティング戦略が必須です。イベント自体での売上がさほど見込めなくても、体験型イベントを通して自社の魅力を身をもって体験してもらうことで、共感や関心が深められます。また参加者の口コミ・UGC生成による、ほかのユーザーへの拡散効果も期待できるでしょう。

◾️事例紹介

日本航空株式会社の事例

Z世代マーケティングに関する相談・コンサルティングは「トライバルメディアハウス」へ

これからのマーケティング戦略において、Z世代は極めて重要なターゲットになっていくことが予想されます。特徴や従来の世代との違いを正しく把握し、Z世代の心へ的確に刺さる戦略設計が欠かせません。

Z世代マーケティングのことなら「トライバルメディアハウス」へご相談ください。「若年層マーケティング」のプロとして、業界に関する豊富な実績・ノウハウと正確なリサーチに基づく戦略設計やマーケティング施策に関するコンサルティングを提供します。具体的な要件や目標が決まっていなくても構いませんので、ぜひお気軽にお問い合わせを。課題解決の最善策を一緒に考えていきましょう。

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