ブランドのマーケティング効果測定に悩んだら読む記事
作成日:2021年2月17日
企業やブランドのマーケティングコミュニケーション(※)に携わる方にとって、避けて通ることのできない「効果測定」。
本記事は、施策の過程や実施後に行う効果測定のお悩みを4つピックアップし、解決に導くための考え方をご紹介します(企業の宣伝・広報・マーケティング担当者の方からよくご相談いただく内容です)。
- どのように効果測定すればいいかわからない
- 本当に効果があったのかわからず、モヤモヤする
- 売上につながっているかわからない
- 短期的な成果を求められてしまう
突き詰めるほど深くて暗い森に迷い込んでしまうなテーマですが、ここでコンパスとなるようなポイントを理解し、社内外の方と正しく議論するためにお役立ていただけると嬉しいです。
※本記事では、広告やPR(ソーシャルメディア運用を含む)、販売促進、イベント、人的販売などを指します。
ブランドのマーケティング効果測定、どのように実施すればいい?
1つ目は、施策の効果をどのように測るべきかわからないというお悩みです。
効果測定は、費用対効果(Return of Cost)と投資対効果(Return of Investment)を明らかにすることです。それぞれの英訳に「Return(リターン)」と表記されているとおり、投下した予算に対して(効果を意味する)リターンをどれくらい得られたかどうかがわかります。
どのように効果測定すればいいかわからない(効果測定方法が分からない)場合は、まず施策の「目的」と「得たい効果」を明確にしましょう。
コミュニケーション施策の目的には、以下の「意識変容」「行動変容」「態度変容」が当てはまりやすく、評価指標や方法は目的によって異なります。
- 意識変容
商品やサービスを認知してもらうこと、興味を持ってもらうこと、理解を深めてもらうことを指します。「(商品やサービスの)認知度」や「理解度」「想起率」などが効果測定指標となり、アンケート調査などで測定することが多いです。
意識変容が進むほど、商品やサービスに対するパーセプション(認識)がより良い方向へ深化していくとご理解ください。 - 行動変容
商品やサービスを予約・購入してもらうこと、店舗に訪れてもらうことを指します。効果測定指標は、予約や購入数、店舗への誘導数などが該当します。 - 態度変容
商品やサービスに対する好意度(好き・愛着などの気持ち)や購入意向(機会があれば買いたいという気持ち)が向上することを指し、アンケート調査などで測定します。
近年の消費者行動研究では、商品やサービスの属性(性能や価格など)だけでなく「感情」の役割が大きいことについても言及されています。
目的や得たい効果が明確になっている場合でも、広く効果を得られる施策を実施すると、効果測定指標や方法も多様になる(迷い悩む)ことがあります。
例えば、マス広告は意識変容(認知獲得)を目的とした場合に適した施策ですが、広告を見た人によっては行動・態度変容に影響を与えることがあります。また、検索連動型広告(リスティング広告)は行動変容を目的とした際に有効な施策で、獲得数や率、単価などで測定することがありますが、出稿量によっては意識変容に寄与することもあるでしょう。
どちらも、目的以外にも効果を得られていますが副次的なため、「最も得たい効果は何か」「それを測定するための指標や方法は何か」を決めて効果測定することをおすすめします。
ブランドマーケティング、本当に効果があったのかわからない
2つ目は、施策によって一定の効果は得られたけれど、その良し悪しがわからなかったり、本当に効果があったのか実感できなかったりするというお悩みです。
例えば、企業やブランドへの好意度の向上を目的にしたソーシャルメディアアカウントを運用する場合、週次や月次でフォロワー数や投稿のリーチ数、いいね数などを測定することが多いです。
上記のような数値でもアカウント運用を評価できる一方で、時には「好意度は本当に上がっているの?(目的は達成しているの?)」「投稿のいいね数が増えると何がいいの?」などと聞かれることがあるのではないでしょうか。
このように、施策の効果がわからない場合は「KGI」と「KPI」を分けて整理してみましょう。KGIはKey Goal Indicator(重要目標評価指標)の略で、施策の目的やゴールなどを指します(お悩み①でご紹介した目的=KGIです)。
KPIはKey Performance Indicator(重要業績評価指標)の略で、上記で定めたKGIに影響を与える各指標を指します。アカウント運用の例でご説明したアカウントのフォロワー数や投稿のリーチ数、いいね数などは、すべてKPIです。KPIだけでは運用の目的が達成できているかわからないため、KPIだけでなくKGIも定期的に測定するようにしましょう。
KPIを決める際は、KGI(目的)につながる指標を設定できているかもポイントです。以下の図のように、KPIが達成されることでKGIが達成されるような構造であることが重要なため、指標を決める際は両者の位置づけに注意しましょう。
ブランドマーケティング、売上につながっているかわからない
3つ目のお悩みは「売上につながっているかわからない」というもの。
マーケティングコミュニケーションに携わる以上、売上に目を向けなければいけないのですが、マーケティングコミュニケーション“のみ”で商品やサービスを売ることはできないためKGIに「売上」を設定するのは避けましょう(業態によっては売上で評価できる施策も一部存在します)。
コミュニケーション施策は生活者に「欲しい」と感じてもらうことを得意としており、実際に商品が購入される(売上に至る)までには商品力や価格、店頭のシェア、市場・他社状況、天候などさまざまな要因が影響します。
仮にKGI(目的)を「売上」としてしまうと、「(上記のうち)どの要因で売れたのか」を振り返るのは困難です。
以下の図のように、KPIにはKGIと相関がある指標を、KGIには売上と相関がありマーケティングコミュニケーションによって達成できる指標を設定すること。その先に事業活動によって達成する売上があることを理解するのが重要です。
ブランドマーケティング、短期的な成果を求められる
最後は、どのコミュニケーション施策も短期的な成果を求められてしまう場合のお悩みです。
ここでは、広告や宣伝、広報予算の使いみちにおける「費用」と「投資」の考え方をご説明します。「費用」として使った予算は費用対効果で評価を、「投資」として使った予算は投資対効果で評価することが重要です。
費用対効果で評価される施策として代表的なのが、サイト訪問や直接売上につなげるためのインターネット広告です。CPC(Click Per Cost/クリック単価)やCPA(Cost Per Acquisition/顧客獲得単価)などで評価されることが多く、予算を投下すれば短期間でも効果が得られる一方で、やめれば効果が得られなくなります。
投資対効果で評価される施策は、年始の新聞やテレビで見かける企業広告、ファンとのイベント開催などが挙げられます。CPCやCPAなどで評価できない一方で、「商品やサービスが選ばれやすい」「(安心して)手にとってもらいやすい」「値引きをしなくても選ばれる」ことにつながり、目に見えない“資産”を中長期的に築くことができます。好意度や購入意向、ブランド想起率などで評価されることが多いでしょう。
このように、短期的に評価すべき施策と中長期的で評価すべき施策が存在しており、どちらも評価指標や方法は異なるため、すべてに短期的成果を求めることはできません。市場の環境や戦略に基づいてこの両方を適切なバランスで実施し、適切に評価する必要があります。
企業やブランドの「資産的価値」への向き合い方については、ブランディングや顧客の熱狂をテーマにトライバル代表の池田とマーケターの皆さんとでアツく議論されています。こちらの記事もあわせてご覧ください。
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ブランドマーケティングおける適切な診断と処方とは
今回は、企業やブランドの担当者からいただくお悩みと、解決に導くための考え方をご紹介しました。すべてに共通するのは、効果測定は「適切な診断と処方」にもとづいて行われるべきだということです。
市場や競合の動き、自社の強みなどを鑑みたうえで(診断)、最適な目的と手法、リソースを決める(処方)のがマーケティングコミュニケーションの基本だと考えると、効果測定は施策を実施した後ではなく検討するときから始まっていると言えるでしょう。
研究や技術の進歩に伴って、日々新しい手法やベストプラクティスが生まれていますが、どのような課題も解決できる万能薬のような施策は存在しません。マーケティングコミュニケーションの施策を検討する際は、以下のポイントを意識してみてください。
- 目的は何か(どの変容を起こすための施策か)を考え、KGIに設定する
- そのうえで、どの手法が最適なのかを決める
- KPIだけではなく、KGIも定期的に測定する
目的の設定から手法の選択、効果測定(指標の策定など)までに課題を感じている方は、ぜひこちらからお問い合わせください。
「認知は高いはずなのに、思うように売れない」「なかなか成果が出ない」などのお悩みはありませんか。
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