なぜ良質なクチコミを増やすことが大切なのか
作成日:2019年9月30日
この記事では、「なぜ良質なクチコミを増やすことが大切なのか」をテーマに、ソーシャルメディアマーケティングの核となる「クチコミ」について解説します。
編集注)この記事における「クチコミ」は、主にユーザーがSNS上で自発的に行う、特定の商品やブランドなどについての投稿、および、レビューサイトにユーザーが投稿する特定の商品やブランドなどに対する評価、を指します。
この記事を読んでわかること
突然ですが、「良質なクチコミを増やすと何が起きるの?」と質問されたら皆さんはどのように答えますか?
クチコミを、“マーケティング活動において大事な存在である”となんとなく認識している方が多いと思いますが、上記の質問にパッと答えられる人は少ないのではないでしょうか。
この問いを考えていくにあたって、まずはクチコミが消費者行動のどこに影響を及ぼすのかを見ていきましょう。
クチコミは消費者行動のどこに影響を及ぼすのか
まずクチコミが消費者に与える影響について、「真実の瞬間」という理論を使って考えていきます。
「真実の瞬間(Moment of Truth)」とは、マーケティング用語で、「消費行動における重要な顧客接点」のことを指します。これはスカンジナビア航空のCEOヤン・カールソン氏(当時)によって90年代に発行された書籍『真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか』の中で書かれている経営革新における重要なキーワードです。
同社は、年に1,000万人もの旅客が飛行機を利用しており、一回の搭乗につき平均5人の乗務員とそれぞれ約15秒ずつ接する機会があることを明らかにしました。そして、その旅客と接する15秒のあいだで、競合他社と異なるブランド体験を提供することができれば、他社と明確な差別化ができると考えたのです。
旅客と接するこの15秒間を「真実の瞬間」とし、顧客視点でのサービスを提供する方針へ転換し、経営を劇的に改善することに成功しました。
その後P&Gが、顧客が店頭で商品を買うかどうかを判断する瞬間=“First Moment of Truth”(以下、FMOT)と、顧客が商品を使う瞬間=“Second Moment of Truth”(以下、SMOT)、2つの真実の瞬間の重要性を説きました。
さらに2011年には、今度はGoogleがFMOTの前に存在している顧客接点として“Zero Moment of Truth”(以下、ZMOT)という概念を提唱。顧客は店頭に来る前にネットで検索をし、商品の評判や機能などの詳細を調べるためこのZeroのポイントに顧客の真実の瞬間が存在すると説いています。
またGoogleによると、ZMOTの前に “STIMULUS”(=受動的な情報取得時に受ける刺激)があり、それがトリガーとなって人々は検索行動をすると説明しています。それは一般的なテレビCMだったり、雑誌広告だったり、何かしらの商品やブランドの刺激が伴って、人はGoogleを訪れるという行動モデルになっています。
たとえば、ソーシャルメディアを見ていて(=受動的な情報取得)、有名人や友人・知人のクチコミでとある商品やブランドが気になり(=刺激)、ソーシャルメディア上で検索をして(=能動的な情報取得)、評判やどのように使われているかのクチコミをチェックした経験は少なくないのではないでしょうか。
サイバー・バズが650人の女性Instagramユーザーを対象に行った調査によると(※1)、「他人の投稿を見て、商品を検索したり、実際に商品購入(店舗来店)をしたことがありますか」(単一回答)との設問に対して、88%のユーザーが「経験がある」と回答しています。
※1 ネットショップ担当者フォーラム「インスタグラムは購買意欲を高める? 投稿から商品を購入&検索した女性は約9割(2016/5/31)」
したがってクチコミは、
①STIMULUS(受動的な情報取得時)に効く
②ZMOT(能動的な情報取得時)に効く
可能性が高いと言えます。
クチコミの影響力
クチコミが消費者行動のどこに影響を及ぼすのかを確認したところで、次は、その影響力について見ていきます。
Googleのアンケート調査(※2)によると、購買行動のどの段階で得た情報が商品の購入に影響を及ぼしたかについて、「ZMOTの情報」と回答した割合は84%にも上っており、ZMOT段階で消費者が接触する情報がその後の購買行動に大きな影響を与えていると言えます。
さらにクチコミの影響力について、このような調査結果もあります。
こちらは、アメリカン・エキスプレス・インターナショナルが日本を含む9つの市場で、各1,000人ずつ合計9,000人の消費者に対して“顧客サービスに対する意識や考え方”に関するインターネット調査を実施した結果の一部です。
調査によると、日本では消費者が新規購入する際における判断基準として、回答した割合の高いものから、「企業の評判」(35%)、「オンライン・ソーシャルメディアの口コミ」(20%)、「友人・家族の勧め」(16%)と続いています。
回答に「クチコミ」が明示的に入っているのは「オンライン・ソーシャルメディアの口コミ」のみですが、「企業の評判」や「友人・家族の勧め」にも少なからずクチコミが関与していると考えられます。
これらは「セール・プロモーション」(13%)、「興味をひかれる広告」(6%)を上回り、クチコミが新規購入に強い影響力を持っていることがわかります。
「売上につながった」話題化施策とは?
となると、すぐ「話題化施策を行ってとにかくクチコミを増やそう」となってしまいがちですが、必ずしもクチコミが増えれば売れるわけではありません。あくまで増やすべきなのは“意向を創る”良質なクチコミです。
日本マクドナルドの黒字化に貢献した、現・ナイアンティックの足立光氏も、MarkeZineのインタビュー(※3)で「話題化=売上ではない」と答えています。
※3 MarkeZine「話題化で売上を上げる方法は? 足立流・ソーシャルメディア活用のすすめ(2019/02/07)」
マクドナルドにおいて足立氏が過去に行った施策、「名前募集バーガー」と「マクドナルド総選挙」を比較すると、前者は新発売のハンバーガーの名前募集に対して2週間で500万という非常に多くの応募があり、話題化には成功したものの売上にはつながらなかったそうです。
その一方で、推しのハンバーガーについてツイートしたり食べたりして投票する形式の後者については、話題化に成功しただけでなく売上にも大きく貢献したとのこと。(※4)
※4 Web担当者Forum「『プレバズのKPI化』『話題化を軸にした商品設計』マクドナルド足立氏が明かすマーケティングのツボ(2017/10/6)」)
実際にX(旧Twitter)を見ると、「名前募集バーガー」に関連したツイートは、「おいしい」「食べたい」といったクチコミも見られるものの、その大半は商品についての具体的な体験や感想よりも、名前をネタにして楽しむツイートが多く投稿されています。
その一方、「マクドナルド総選挙」については、自身の好きなハンバーガーについて語るツイートや、企画限定のハンバーガーの感想を商品の写真とともに投稿するツイートが多数見られ、前者の企画にくらべると「自分も食べたい」と思わせるクチコミが多く見受けられました。
これらの事例からもわかるように、単にクチコミを増やすだけでなく、その商品やサービスを入手したい・体験したいと思わせるような良質なクチコミを増やさないと、売上につながらない可能性が高いと考えられます。つまり、良質なクチコミとは、“意向を創る”クチコミなのです。
【まとめ】なぜ良質なクチコミを増やすことが大切なのか
以上から「なぜ良質なクチコミを増やすことが大切なのか」の答えは、
①クチコミは、【何を買うか/買わないか】に大きく影響を与える「STIMULUS」と「ZMOT」の段階で消費者に接触し、購入の意思決定に強い影響を及ぼす可能性が高いから
②良質なクチコミは、見た人にその商品やサービスを【入手したい/体験したい】という気持ちにさせ、売上につながる可能性が高いから
この記事をきっかけに、改めてクチコミの重要性やクチコミが消費者行動のどこに寄与するのかを理解し、自社や自ブランドについて良質なクチコミが生まれているのかを顧みるとともに、次の改善アクションにつなげていただくと良いのではないでしょうか。
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