コミュニケーション戦略とは?5ステップでわかる立案方法や主な手法を解説

企業が顧客と良好な関係を築き、ブランド価値や売上を継続的に高めていくためには、「誰に・何を・どう伝えるか」を戦略的に設計するコミュニケーション戦略が不可欠です。単なる情報発信ではなく、顧客の共感や信頼を得るための一貫性あるアプローチが求められます。
本記事では、コミュニケーション戦略の基本的な考え方から立案の流れ、代表的な手法までわかりやすく解説します。
コミュニケーション戦略とは?
はじめに、コミュニケーション戦略について確認しましょう。
コミュニケーション戦略とは何か
コミュニケーション戦略とは、企業が「誰に」「何を」「どう伝えるか」を設計することです。マーケティングや広報、ブランディングなどを通じて、顧客の共感や信頼を獲得し、最終的に売上やブランド価値の向上を目指します。
コミュニケーション戦略の2つの柱
コミュニケーション戦略は、大きく分けて「アウターコミュニケーション」と「インナーコミュニケーション」の2種類に分類されます。
アウターコミュニケーションは、顧客や外部関係者に向けた情報発信を指し、広告、販促、PR活動などが含まれます。商品・サービスの魅力を伝え、共感や行動を促すことが目的です。企業の収益にも直結するため、ターゲットの分析と的確なメッセージ設計が欠かせません。
一方のインナーコミュニケーションは、従業員や社内関係者に向けた情報共有・浸透の取り組みで、社内報や研修、ワークショップなどが代表例です。経営方針や企業理念を社員に伝え、組織の一体感を高める役割を担います。
なお、本記事では、外部との接点である「アウターコミュニケーション」に焦点を当てて解説していきます。
コミュニケーション戦略とプロモーション戦略の違い
コミュニケーション戦略と混同されやすい言葉に「プロモーション戦略」があります。どちらも顧客へのアプローチを扱う手法ですが、目的や内容、期間に明確な違いがあります。以下に両者の違いを整理しました。
コミュニケーション戦略 | プロモーション戦略 | |
目的 | 長期的なブランド価値の向上 | 短期的な売上アップ |
内容 | 広報、広告、SNS運用、ブランドストーリー構築など | 割引キャンペーン、クーポン配布、ポイントサービスなど |
期間 | 継続的 | 期間限定 |
コミュニケーション戦略は、企業全体のブランド価値を高めるための長期的・包括的な取り組みです。一方でプロモーション戦略は、短期的な成果を狙った個別の施策であり、コミュニケーション戦略の一部として位置づけられます。
コミュニケーション戦略を立案する5ステップ
効果的な戦略をつくるには、次の5ステップに沿って設計していくことがポイントです。
- 現状を分析する
- 目標を設定する
- カスタマージャーニーを設計する
- コミュニケーション手法を選ぶ
- 効果測定を行う
ここからは、各ステップを順に見ていきましょう。
ステップ1. 現状を分析する
効果的なコミュニケーション戦略を立てるには、まず現状分析から始めることが重要です。自社の強みや弱み、競合の動き、顧客のニーズなどを客観的に分析することで、土台となる情報が整い、的確な戦略につなげられます。その際に活用できる代表的なフレームワークは以下の3つです。
フレームワーク名 | 詳細 |
3C分析 | ・Company(自社):自社の強みや弱み、経営資源、ブランドイメージなど ・Competitor(競合):競合他社の戦略、商品・サービス、ターゲット層など ・Customer(顧客):顧客のニーズ、購買行動、価値観など |
SWOT分析 | ・Strengths(強み):自社の競争優位性となる要素 ・Weaknesses(弱み):自社の課題や改善点 ・Opportunities(機会):市場の成長性や新たなビジネスチャンス ・Threats(脅威):競合の動向や市場のリスク要因 |
4P分析 | ・Product(製品):製品の特徴や強み ・Price(価格):価格設定の妥当性 ・Place(流通):販売チャネルの評価 ・Promotion(プロモーション):現在のプロモーション手法の効果 |
これらの分析を通じて、自社の現状やマーケットの動きを正確に捉え、次のステップに活かしていきましょう。
ステップ2. 目標を設定する
現状分析を踏まえたら、次はコミュニケーション戦略の目標を具体的に設定します。たとえば、「ブランド認知度を前年比で20%向上させる」「半年で新規顧客を1,000人増やす」といったように、成果を数値で明示することで、取り組むべき方向性がはっきりします。
このときに役立つのが、「SMARTの法則(注1)」に基づいた目標設定です。SMARTに沿って目標を設計することで、行動計画が立てやすくなり、評価基準も明確になります。
(注1)SMARTの法則:目標設定のフレームワーク。「Specific(具体的)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Relevant(関連性)」「Time-bound(期限付き)」の5要素を満たすことで、効果的な目標を設定する。
ステップ3. カスタマージャーニーを設計する
カスタマージャーニーとは、顧客が製品やサービスを認知してから購入・利用に至るまでの一連のプロセスを可視化したものです。各段階で顧客が「何を考え、何を感じ、どのように行動するか」を理解することで、最適なタイミングで最適な情報を届けるコミュニケーション施策を設計できます。
カスタマージャーニーを具体的に描く際には、以下のような購買行動モデルが役立ちます。
購買行動モデル | 意思決定のプロセス |
AIDMAの法則 (代表的な購買意思決定プロセス) | Attention(注意)→ Interest(興味)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動) |
AISASの法則 (インターネット上で購買行動を行う現代における代表的な購買意思決定プロセス) | Attention(注意)→ Interest(興味)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有) |
AMTULの法則 (長期的な購買意思決定プロセスのモデル) | Awareness(認知)→ Motivation(動機付け)→ Trial(試用)→ Usage(使用)→ Loyalty(ロイヤルティ) |
これらのモデルを参考にすることで、どのタイミングでどのような情報を届けるべきかが明確になり、効果的なコミュニケーション設計につながります。
ステップ4. コミュニケーション手法を選ぶ
ターゲットに伝えたいメッセージを確実に届けるためには、最適なコミュニケーション手段の選定が欠かせません。コミュニケーション手法には主に5つの種類があり、目的やターゲットによって使い分けることが重要です。(詳細は、後述の「コミュニケーション戦略の主な手法」で解説します。)
中でもポイントとなるのが、オンラインとオフラインの手法を組み合わせる「コミュニケーションミックス」です。たとえば、若年層にはSNS広告やインフルエンサーの活用、高齢者層には新聞やDMなど紙媒体が有効とされます。このように、ターゲットの属性や行動に応じて手法を柔軟に組み合わせることが、戦略の成果につながります。
ステップ5. 効果測定を行う
コミュニケーション戦略は、実行して終わりではありません。施策の実施後は、目標の達成状況を定期的に確認し、効果を検証することが重要です。期待通りの成果が得られていない場合は、原因を分析し、改善策を講じることで次のアクションにつなげます。
この一連の流れには、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Action)の活用が有効です。継続的に見直しと改善を重ねることで、戦略の精度と効果を高めていきます。
コミュニケーション戦略の主な5つの手法
コミュニケーション戦略では、目的やターゲットに応じてさまざまな手法を使い分けます。ここでは、代表的な5つの手法について順に解説していきます。
- 広告
- 販売促進
- 人的販売
- パブリシティ
- クチコミ
広告
広告は、企業が費用を投じて、特定のターゲットに情報を届ける代表的なコミュニケーション手法です。
ブランド認知の向上や購買行動の促進を目的に、オンライン広告とオフライン広告の2種類があります。
・オンライン広告 検索広告(リスティング)、バナー広告(ディスプレイ)、SNS広告、動画広告など。細かなターゲティングや効果測定が可能なのが特徴。 ・オフライン広告 テレビCM、新聞・雑誌広告、屋外広告など。幅広い層へのアプローチや信頼性の高さが強み。 |
広告媒体を選ぶ際は、ターゲットの属性や行動、目的、予算に応じて、オンラインとオフラインをうまく組み合わせることがポイントです。
販売促進
販売促進は、顧客の購買意欲を短期間で高め、実際の購買行動を後押しするための施策です。主な販売促進施策には、次のようなものがあります。
施策名 | 内容 |
キャンペーン | 初回購入クーポンや期間限定セールなど、特典を設けて購買を促す。期間限定で「今買う理由」をつくる。 |
サンプル配布 | 無料で商品を試してもらい、使用感や品質を実感してもらう。化粧品や食品などでよく活用される。 |
イベント・体験会 | 展示会やセミナー、試食会などで商品を実際に体験してもらい、理解と信頼を深める施策。 |
販売促進は、即効性のあるコミュニケーション手法として、特に、今すぐ行動を起こしてほしいタイミングに有効です。ターゲットに合ったオファーを最適なタイミングで届けることで、短期的な売上向上に大きな効果をもたらします。
人的販売
人的販売とは、営業担当者や販売スタッフが顧客と直接コミュニケーションを取りながら提案・販売を行う手法です。主な手法は以下のとおりです。
施策名 | 内容 |
店舗での接客 | 実店舗やショールームで、商品の特長や使い方を説明しながら、顧客の疑問にその場で対応する。 |
営業活動 | 訪問・電話・メールなどを通じて顧客にアプローチし、ニーズを把握した上で最適な提案を行う。特にBtoBで多く用いられる。 |
人的販売の強みは、顧客の要望を直接聞き、それに応じた柔軟な提案ができる点です。そのため、高額商品や専門性の高い商品、BtoBビジネスなど、購入までに検討や信頼構築が必要なシーンに特に適しています。
また、対面でのやり取りを通じて信頼関係を築き、長期的な顧客関係へとつなげる役割も大きく、顧客ロイヤルティの向上にも貢献します。
パブリシティ
パブリシティとは、新聞やテレビ、Webメディアなどの報道機関を通じて、企業や商品に関する情報を発信する手法です。主な手法には、以下のとおりです。
施策名 | 内容 |
ニュースリリース/プレスリリース | 新商品・サービスの情報や企業の取り組みを報道機関に提供し、記事や番組での掲載・放送を狙う。 |
記者会見 | 企業の代表者などがメディア関係者に向けて発表・説明を行い、質疑応答を通じて正確な情報を伝える場。重要発表時に実施される。 |
パブリシティの最大のメリットは、メディアに取り上げられることで社会的に注目されていると認識され、企業や商品への信頼感が自然と高まる点にあります。
クチコミ
クチコミは、消費者同士の情報交換を活用したコミュニケーション手法です。特に近年はSNSの普及により、企業発信よりも信頼されやすく、自然に広がる情報源として大きな影響力を持つようになっています。主な施策は以下のとおりです。
施策名 | 内容 |
UGC | Instagramのハッシュタグ投稿やレビュー動画などのユーザーが自発的に投稿したコンテンツのこと。 |
口コミサイトでの評価 | Amazonや食べログなどのレビュー・評価。多くのユーザーが購買判断の参考にしている。 |
クチコミの強みは、第三者である消費者の声だからこそ信頼されやすい点にあります。ユーザー自身の体験をベースにしているため、共感を呼びやすく、拡散力も高いのが特徴です。
UGCについて詳しく知りたい方は下記の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
UGC(User Generated Content)は、消費者の信頼を得ながらブランド認知や購買促進につなげる強力なマーケティング手法です。本記事では、UGCの意味や種類、企業の成功事例、導入時の注意点を解説します。SNS時代に欠かせないUGCを効果的に活用し、ビジネス成長につなげましょう。
コミュニケーション戦略で成功するためのポイント
コミュニケーション戦略で成功するためのポイントを確認しましょう。
ターゲットの属性や行動に合わせてコミュニケーションミックスを行う
現代のコミュニケーション戦略では、デジタルとアナログ、それぞれのチャネルを組み合わせる「コミュニケーションミックス」が重要です。
デジタルチャネルは即時性とターゲティングに優れ、個別最適な情報発信が可能です。一方、アナログチャネルは信頼感や体験価値を伝えやすく、感情に響く表現に向いています。たとえば、WebやSNSで情報を伝え、実店舗で商品を手に取ってもらうといったチャネルの連携により、理解と納得が深まり、購買にもつながりやすくなります。
チャネルごとの特性を活かし、相互に補完し合うことで、より効果的な戦略を実現できます。
コミュニケーションデザインの視点を取り入れる
コミュニケーション戦略を効果的に機能させるためには、「どう伝えるか」を設計するコミュニケーションデザインの視点が欠かせません。単に情報を届けるだけでなく、相手に伝わる工夫を加えることが重要です。
具体的には、次の3つのポイントを意識することが求められます。
- 誰に伝えたいのか? : ターゲットを明確にする
- 何を伝えたいのか? : メッセージを簡潔にまとめる
- どのように伝えたいのか? : 文章や動画などターゲットに合わせた表現方法を選択する
これらを踏まえて情報を整理し、視覚的にも分かりやすい形で設計することで、顧客の理解を深め、感情的な共感を生むコミュニケーションが実現できます。
自社に適したコミュニケーション戦略を立てて目標達成を目指そう
コミュニケーション戦略は、顧客との信頼関係を深め、ブランドの価値を育てていくために欠かせない土台です。大切なのは、「誰に・何を・どう伝えるか」を一貫して設計すること。伝え方を見直すだけで、受け手の印象や反応にも違いが生まれてきます。まずは、自社の現状を整理しながら、できることから少しずつ取り組んでみてください。
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