真っ先に思い浮かべるブランドはどれ? 15業界の調査結果を大公開!
2022年6月20日に、トライバルメディアハウス(以下、トライバル)代表の池田による新著『売上の地図 3万人を指導したマーケティングの人気講師が教える「売上」を左右する20のヒント』が出版されました。
この記事では、本書にも掲載されている「Evoked Set調査2022」の調査結果を公開・解説します。Evoked Set(想起集合)調査とは「各業界やカテゴリーにおいて真っ先に想起される『第一想起』ブランドは何か?」を明らかにすることを目的に、トライバルが実施したものです(2022年2月実施/のべ15,000人を対象)。
設問や対象となったカテゴリーは以下のとおりです。後述する調査結果では、対象カテゴリーごとの「第一想起」ブランドと、第一想起から第三想起までの購入率をランキングでご紹介しています。
知名集合・処理集合・想起集合・第一想起のブランドと、その理由(自由回答)
第一想起から第三想起の購入・利用実績(単一回答) 他
▼対象となる15カテゴリー
ビール、チューハイ、チョコレート、アイスクリーム、衣類用洗濯洗剤、歯磨き粉、マスカラ、掃除機、ドライヤー、デジタル一眼レフカメラ、クレジットカード、自動車保険、住宅メーカー、動画サブスクリプションサービス、温泉地
本記事を読むことで、上記カテゴリーの宣伝・広報・マーケティングを担当する方にはどのブランド名が「第一想起」として挙がっているのかを、担当していない担当者には似た傾向のあるカテゴリーの結果やカテゴリー同士の差異などを参考にしていただけます。
なぜ想起が大切なのか?
調査結果を紹介する前に、ブランド・カテゴライゼーションという考え方についてご紹介します(本調査はこの考え方をもとにしています)。
ブランド・カテゴライゼーションとは、Bris㎝x and Laroche(1980)によって考察されたモデルです(※1)。ある製品カテゴリーについて生活者一人ひとりの頭の中でどのようにブランドが分類されているかを概念化したものです。
入手可能集合(消費者が情報を入手できる全ブランド)の中から、まるでトーナメントのように各段階を勝ち上がっていき、第一想起のポジションを獲得すると思っていただくと分かりやすいでしょう。
各段階では以下のようにブランドが分類されています。これらをすべて乗り越えているブランドのうち、真っ先に選ばれるブランドが「第一想起」ブランドとなります。
・処理段階:ブランドの製品属性で評価することができるか
・考慮段階:購買を前向きに考えることができるか
「想起集合」や「第一想起」に名前を挙げられるようなブランドになることの重要性は、プロモーションに携わることも多い私たちの仕事が、「メンタルアベイラビリティ(想起のされやすさ)」を高めることによって商品やサービスを買い求めやすくすることにあるからです(※2)。
メンタルアベイラビリティと一緒に語られる「フィジカルアベイラビリティ(買い求めやすさ)」は、マーケティング4Pにおける「Place」によって変動し、主にチャネル戦略によって高めることができます。
大手企業のプロモーション領域ではコントロールしづらいことも多いため、マーケティングコミュニケーション(プロモーションを含む)では、もう一方のメンタルアベイラビリティを高めることが求められます。
調査結果からは、メンタルアベイラビリティが高いことを示す「想起集合」や「第一想起」にどのブランド名や企業名が挙げられているのかが分かります。自社や他社、各カテゴリーの状況を、ぜひご覧ください。
※2 メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティについては、バイロン・シャープ著の『ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11』を参照
調査データの見方解説
次に、本調査のデータの見方をご説明します。
本調査は「知名集合」「処理集合」「想起集合」のすべてにおいて、助成想起ではなく純粋想起回答としているため、調査結果には会社名やブランド名が混在しています。選択肢から選んでいただくのではなく、カテゴリーごとに思い浮かぶ企業名やブランド名を回答いただくという方式です。
「ビールといえば?」と聞かれて、商品名を想起する人もいれば、メーカー名を想起する人もいます。カテゴリーごとにプロダクトブランドが優勢なのか、コーポレートブランドが優勢なのかも確認してみてください。
第一想起ランキング
カテゴリーごとに、以下のようなグラフを掲載しています。
表は「第一想起に選ばれたブランド」順で掲載し、表内の数値は各回答者数を示しています。
概ね、順位どおりに「知名集合」から「第一想起」までの数が大きくなる傾向にありますが、ブランドによっては「知名集合」の数が上位のブランドより大きいにも関わらず、「処理集合」の数字が下がっている(ブランド名は知っているけれども、どのような特徴があるブランドなのかを上位ブランドに比べて知らない)こともあり、カテゴリーごとに特徴が見られます。
想起順位ごとの購入率
以下は、想起順位ごとの購入率を表したグラフです。第一想起に挙げられたブランドの購入率と第二・第三想起で挙げられたブランドの購入率にどのような違いがあるのか、カテゴリーごとにご確認ください。
【参考】想起集合に入っているブランド数
また、想起集合に関する質問で明らかとなった、想起集合に入っているブランド数の平均値は以下のとおりです。想起集合の平均値は、温泉地が最多の2.42個、歯磨き粉が最少の1.48個で、すべてのカテゴリーで3個未満でした。
カテゴリー別、第一想起ランキングと想起ごとの購入率
それでは、15カテゴリー別に調査結果をご紹介します。画像下にはトライバル代表 池田のコメントを掲載していますので、調査結果とあわせてご覧ください。
(1)ビール
購入率を見てみると、第一想起から第三想起までの購入率がいずれも高いことに、「いろいろな種類を試したい」という消費者のバラエティーシーキング行動が現れている。
(2)チューハイ
ただし、ビール同様、バラエティーシーキング行動が強いため、2位、3位でも購入率は高い。
(3)チョコレート
ビールやチョコレートと同様、バラエティーシーキング行動が強いため、2位、3位でも購入率は高い。
(4)アイスクリーム
一方で、ビール、チューハイ、チョコレート同様、バラエティーシーキング型のため第三想起でも購入率は高い。そのため、想起集合に加えてストアカバレッジやインストアマーチャンダイジングが売上の重要変数といえよう。
(5)衣類用洗濯洗剤
購入率は2位からガクンと下がるため、第一想起の『アタック』が強いことが分かる。
(6)歯磨き粉
また、購入率は想起順に下がっている。下がり幅が他のコモディティ化している商品カテゴリー(ビールや歯磨き粉など)より大きいため、想起順位が重要であると分かる。
(7)マスカラ
また、購入率は想起順に下がっており、知名集合に入るだけではなく第一想起を目指すことの重要性が分かる。
(8)掃除機
一方で、第一想起の購入率が他カテゴリーと比較して低い。これは『ダイソン』商品が高価格であることが起因していると推察される。ただし、数値が示すとおり購入率は第一想起ブランドが圧倒的に高い。
(9)ドライヤー
購入率も第一想起ブランドが圧倒的に高いため、想起の重要性が極めて高いカテゴリーといえよう。
(10)デジタル一眼レフカメラ
購入率は1位と2位の差が激しいため、第一想起ブランドが有利であることが分かる。
(11)クレジットカード
第一想起~第三想起までの購入率(申し込み率)の差は図のとおり。
※3 楽天カード株式会社発表「楽天カード、カード発行枚数が2,500万枚を突破(2022年1月27日)」、「『楽天ポイント』、累計発行ポイント数が3兆ポイントを突破(2022年7月19日)」を参照
(12)自動車保険
特筆すべきは想起順位ごとの購入率(契約率)で、1位と2位の差が2.5倍も開く15カテゴリーの中でも特異な結果となった。「想起→検索→納得→契約」というフローが確立されていることがうかがえる。
※4 自動車保険を主にダイレクト販売している損害保険会社の2020年度までの自動車保険料収入より(ソニー損保調べ/ソニー損保のWebサイトを参照)
(13)住宅メーカー
一方、高価格で購入リスクが高い商材のため、想起集合に入ったメーカーが横並びで検討されており、想起順位による購入率(契約率)にさほど差が生じない結果となった。住宅メーカーは想起集合に入ること、商材の差別的競争優位性、営業力の3点が重要といえよう。
(14)動画サブスクリプションサービス
第一想起ブランドの購入率(契約率)が高いことが分かる。『Amazonプライム・ビデオ』は、『Amazon』の翌日配送・配送料無料や『Amazon Music Prime』など他のサービスも付帯した『Amazonプライム』を契約すれば使えるサービスであり、多角的に契約や想起を獲得できる特長を持つ。そのため、主に動画配信サービスを提供する『Netflix』と『Hulu』が善戦しているといえよう。
(15)温泉地
住宅メーカー同様、想起順位による購入率(来訪率)にさほど差が生じない結果となった。2~3カ所の選択肢(想起集合)の中から横並びで比較検討されるため、旅行地を検討する際、ほぼ確実に行われる旅行地情報検索、観光地や旅館などのクチコミ検索、Instagramのハッシュタグ検索が重要な役割を果たしているといえそうだ。
最後に
以上、15カテゴリーの第一想起ランキングと想起ごとの購入率をご紹介しました。
・第一想起以下の購入率が大きく下がるカテゴリー
・そもそも想起集合に含まれているブランドがかなり少ないカテゴリー
・知名集合にはランキング上位に入っているものの、第一想起に選ばれていないブランド
など、カテゴリーによってさまざまな示唆が得られる結果になっています。
本調査結果が示すとおり、第一想起に選ばれたブランドの購入率はもっとも高く、第二想起、第三想起となるにつれて購入率が下がることから、売上に貢献するためには第一想起ポジションを獲得することが重要です。
トライバルは、いま置かれているブランドポジションの把握から戦略策定、具体的な打ち手の検討、実行まで、幅広くお力添えいたします。本調査をご覧いただき、自社ブランドのこれからについて相談したいと思っていただけましたら、ぜひ以下よりお問い合わせください。
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調査概要
■調査実施期間:2022年2月25日~3月16日
■調査対象
全国20~69歳男女で、各カテゴリーの商品やサービスなどを自身で購入、利用、または問い合わせをした人
■対象
全15カテゴリー(ビール、チューハイ、チョコレート、アイスクリーム、衣類用洗濯洗剤、歯磨き粉、マスカラ、掃除機、ドライヤー、デジタル一眼レフカメラ、クレジットカード、自動車保険、住宅メーカー、動画サブスクリプションサービス、温泉地)
※1カ月以内に購入・利用したサンプルから優先的に回収
■サンプルサイズ:各1,000サンプル
■サンプル構成:性別×年代(20~69歳)10代ごと10セル均等割り付け
※マスカラは女性のみを対象とし、500サンプル
■設問内容
知名集合・処理集合・想起集合・第一想起のブランドと、その理由(自由回答)
第一想起から第三想起の購入・利用実績(単一回答) 他