実績紹介

想起を軸とした指標改革プロジェクト|指標を変え、調査を変え、投資を変える。「想起」への指標改革

株式会社ポーラ

株式会社ポーラさまは、長く積み上げてきた独自のブランディング指標と売上のつながりが見えにくい、という課題に対し、当社とともに想起を軸とした戦略に取り組んでいます。評価指標の再定義から調査設計の変更、投資配分の見直し、そしてチームを越えた合意形成まで──このプロジェクトの特徴は、施策をひとつ導入して終わりではなく、ブランドを評価する「ものさし」そのものを組み替え、組織の意思決定の型を変えていったところにあります。そしてそれは、いまも現在進行形で続いています。

株式会社ポーラさまのチームは、もともと強い課題意識と高い吸収力を備えていました。それでもなお、外部のパートナーである当社が並走する意味はどこにあったのか。株式会社ポーラ ブランドコミュニケーション部 戦略・設計チームの岩岡さまと、当社シニアコンサルタント・部長の小島に、広報が聞きました。

実績のポイント
  • 理念に根ざした独自のブランディング指標が必ずしも売上と相関しないという構造的な課題に対し、想起を売上の先行指標として再定義
  • 定点のブランド調査をブランド想起調査へ組み替え、投資配分を製品ごとの分散から主力ブランドへ集中
  • 戦略・プロモーション・クリエイティブのチームをまたいで「想起」という共通言語を構築し、意思決定の型を組織に定着
(左:服部さま、中央:岩岡さま、右:当社 小島)

トライバルメディアハウスを選定した理由|セミナーで出会った「想起」という言葉

──まず、当社との出会いを教えてください。

岩岡さま:2025年に当社(トライバルメディアハウス)が開いたセミナーに、チームのメンバーが参加して、『売上の地図』や想起の考え方を持ち帰ってきたんです。当時の私たちは、ブランド指標はあるけれど、それが売上にどうつながっているのかを、自分たちの言葉で説明できずにいました。

日々の活動が、ブランドのためになっているはずだという手応えはあるのに、それを数字の線でたどれない。そのもどかしさに、ぴたりと言葉を与えてくれたのが、想起という概念だったんです。社内に持ち帰ったときの「これだ」という感触は、いまでも覚えています。

──最初の段階で、当社はどのように関わり始めたのでしょうか。

小島(当社):最初にお話を伺ったとき、ポーラさまはすでに強い問題意識をお持ちでした。ですから当社は、いきなり施策のご提案をするのではなく、「本当に解くべき課題は何か」を一緒に確かめるところから入りました。

よくあるのは、「想起を上げる施策を考えてほしい」というご依頼に対して、すぐに施策のメニューを並べてしまうことです。けれど、それでは指標が売上につながらないという根っこの問題は解けません。当社はまず、売上の先行指標をどう整理するか、という構造そのものに焦点を当て直しました。この「受注の前から課題を一緒に定義し直す」というスタンスが、当社の関わり方の出発点です。

プロジェクトの背景|可視化して見えた「地図のズレ」

──当時、ポーラさまの社内ではどんな課題が議論されていたのでしょうか。

岩岡さま:あるとき、見ている指標を一枚に並べて可視化してみたんです。すると、日々追えているのはWeb上の数字──資料の完了数やPV、EC上の指標くらいで、しかもそれぞれの売上への寄与は限定的なケースがあることが分かってきました。「この見取り図は、見直す必要があるのかもしれない」。きれいに整っていることと、それが売上の先行指標になっていることは、まったく別の話でした。それまでKPIの中心に置いていた「新規獲得数」も、売上への道筋を分解しようとすると、途中で線が切れてしまう。獲得の数は見えても、その手前で生活者の頭の中に何が起きているのかが見えていませんでした。

2025年に社長が交代し、顧客起点でブランドエクイティを大事にする、という方針が経営から示されたことも追い風でした。想起の考え方はその方針と重なっていたので、社内への浸透は比較的スムーズに進みました。

(岩岡さま)

小島(当社):ここを表面的な「指標の入れ替え」で終わらせないことが、いちばん大事でした。指標を変えるというのは、数字をひとつ差し替えることではなく、組織が何を成果と認めるか、その評価のものさしを変えることです。ものさしが変われば、日々の意思決定も、予算の配分も、現場の動き方も変わらざるをえません。

ですから当社は、新しいものさしの先で何を測り、どう意思決定し、どう組織に根づかせるかまでをセットで設計する前提で関わりました。指標の再定義は、入口であって出口ではないんです。

戦略の肝|CEPsから調査、投資配分まで

──具体的に、当社はどのように関わっていったのですか。

岩岡さま:まず、どのカテゴリーで想起を取りにいくのかを決め、そのカテゴリーのなかで生活者が何を求めているのか、必要な要件は何かを把握する。そこからサポートいただきました。そのうえで、御社のフォーマットを使い、戦略設計チームだけでなく企画・クリエイティブのチームも巻き込んで、CEPsの洗い出しを一緒に進めていただきました。

さらに、定点で見ていたブランドイメージ調査を、ブランド想起調査へと組み替えました。それにともなって、問いの立て方も「このブランドにどんな印象を持っていますか」ではなく、「その瞬間に、ほかにどんな選択肢が思い浮かびましたか」へ。想起の構造を測る方向に、評価の仕方そのものが変わったんです。

小島(当社):当社の役割は、この一連を「点」ではなく「線」としてつなぐことでした。CEPsの設計、調査の設計、投資の判断──これらは、社内では往々にして別々の担当・別々の会議で語られます。それぞれが正しくても、つながっていなければ売上には届きません。当社は、想起という一本の軸でこれらを貫き、どの順番で手をつけるかを一緒に決めていきました。

進め方としては、当社がアジェンダと論点(問い)を整理し、ポーラさまの回答を議論の場に乗せて深める、という往復を重ねています。答えを外から持ち込むのではなく、ポーラさまの中から答えを引き出して構造化していく。この往復そのものが、当社のディスカッションパートナーとしての関わり方です。

(当社 小島)

投資の組み替え|分散から集中へ、一過性から積み上げへ

──限られた予算を、どこに、どう振り向けたのでしょうか。

岩岡さま:強みが十分に伝わりきっていなかった背景には、コミュニケーションの仕方もありました。従来は新製品が出るたびに、その製品ごとのプロモーションを行っていました。製品が変われば伝えるメッセージも変わるので、同じ強みが繰り返し届かない。一度きりの発信にとどまり、次につながらず積み上がらない。だから、強みが頭の中に残らなかったんです。

想起は一貫性を持って取り組まないと上がらず、積み上がるまでに時間もかかります。それならなおさら投資は集中させ、コミュニケーションもそろえた方がいい。そこで、最もLTVの高い主力ブランドに絞り、同じ強みを継続して訴求し続ける形に、投資の配り方を組み替えました。「新製品のプロモーションはやらないのか」という声も社内にはありました。もちろん、短期的に必要なコミュニケーションは続けます。そのうえで、投資の重心を中長期の想起づくりに移す──経営がその方針を示してくれたこともあり、理解は得られています。

当社が介在する意味 |なぜ社内だけでは越えられないのか

──ポーラさまは強い問題意識をお持ちで、吸収力も高いチームだと伺っています。それでも、当社のような第三者が必要だったのはなぜでしょうか。

小島(当社):優秀なチームほど、それぞれが自社のブランドへの深い思いと、これまでの成功体験を持っています。それは本来、何より大切な資産です。けれど、いざ「ものさしを変えよう」とすると、その思いや経験が、無意識のうちに判断の前提を縛ってしまうことがあります。「うちのブランドはこうあるべきだ」という前提は、社内の人どうしでは指摘しにくい。指摘すれば角が立ちますし、立場や経歴の違いがそのまま力関係になってしまうこともあります。

第三者は、そこにしがらみがありません。当社は、マーケティングの構造から「ここはこう見えます」と率直にお伝えできる。決めるのはポーラさまですが、判断の材料をフラットに机の上に並べる役割は、外部だからこそ担えるものです。

岩岡さま:私たち一人ひとりに経歴も思い入れもあって、「ポーラだからこうだ」という前提を、自分では気づかないまま持っています。小島さんはそこにとらわれず、「それはマーケティング的に違いますよ」とフラットに言ってくれる。社内の人間が同じことを言うと角が立つ判断を、第三者だからこその立場で提案をしてもらえました。正直に言えば、もし私たちだけで進めていたら、お互いの思いを尊重し合うあまり、どこかで止まっていたと思います。

──第三者が入ることで、議論の進み方そのものはどう変わりましたか。

岩岡さま:明らかに前に進むようになりました。小島さんは引き出すのがとても上手で、複数のチームが混ざった場でも、それぞれの発言を引き出してまとめてくれます。「これとこれをまとめると、こういう場合ですよね」と場合分けして整理してくれるので、議論が散らからない。社内だけだと、声の大きい意見や、過去のやり方に引っ張られてしまいがちですが、第三者が論点を構造化してくれることで、全員が同じ地図の上で話せるようになりました。

いちばん効いたのは、共通言語をそろえてくれたことかもしれません。チームや役割によって、同じ言葉でも捉え方が微妙に違います。その「壁」を、ファシリテーションで一つずつ埋めていってくれました。日常的にブランド視点で業務を行っているメンバーが「ブランドとして何を言いたいか」から「生活者にいつ思い出されるか」という市場視点になったのは、大きな変化でした。N1インタビューにしても、ただ深く聞くだけだったものが、想起の構造に沿った視点に変わり、一つひとつの声が点ではなく線としてつながっていく感覚が生まれました。

──当社が、関わるうえで大切にしている姿勢を教えてください。

小島(当社):答えを押しつけないことです。当社のやり方は、外から正解を持ち込んで「この通りにやってください」と渡すコンサルティングとは違います。かといって、言われた施策を実行するだけの代理店でもありません。ポーラさまの中にある判断や知見を引き出し、マーケティングの構造に照らして「ここは活かしましょう」「ここは一度脇に置きましょう」と一緒に仕分けしていく。そして、決めるのはあくまでポーラさま自身です。ご一緒する期間を終えても、ポーラさまが自分たちでものさしを使いこなし、意思決定できる状態をつくることが、伴走のゴールだと考えています。

想起獲得のような取り組みは、一度の施策では完成しません。だからこそ、戦略を描くだけでなく、それが組織に定着するまで現場に踏み込んで推進する。そこに、当社が介在する意味があると思っています。

(左:岩岡さま、右:当社 小島)

伴走がもたらしたもの|社内に生まれた変化

──プロジェクトを通じて、ポーラさまの中ではどんな変化が起きましたか。

岩岡さま:日々の意思決定も、投資の意思決定も、判断の基準が変わりました。「慣例だから」「新製品が出たから」という決め方がなくなって、想起への寄与で考えるようになったんです。何にどれだけ投資するかを、ゴールから逆算して、絞るべきところは絞れるようになりました。N1インタビューの聞き方も、クリエイティブの発想も変わってきています。

そして思いがけなかったのは、社内で積み上げてきた考え方が、社外で語る機会や外部からの評価を通じて、あらためて社内で共有され、確信として根づいていくことです。メンバーのあいだでも「外から見ても、たしかに意味がある」と、自分ごととして受け止める空気が生まれました。

小島(当社):ポーラさまの吸収力は本当に高くて、お渡しした考え方を、すぐにご自身の言葉とアクションに変えていかれます。当社はその触媒になっているにすぎません。けれど、触媒がいることで反応が一気に進む、ということもあります。共通言語がチームを越えて根づき、意思決定の型が変わっていく──この変化が、施策の成果よりも先に、組織の中に資産として積み上がっていることが、いちばん大きいと感じています。

今後の展望|「想起形成モデル」を自分たちのデータで

──今後、当社と取り組んでいきたいことを教えてください。

岩岡さま:いま組み立てている最中のKPIモデルを完成させたいです。どの施策がどれだけ積み重なるとエクイティが動き、それが想起に表れるのか。その因果を、自分たちのデータで説明できる状態にしていきたい。まだ道半ばですが、一緒に走ってくれるパートナーがいるのは、本当に心強いです。社内だけで抱え込まず、フラットに論点をさばいてくれる存在がいることの価値を、このプロジェクトで実感しました。

小島(当社):想起は、短期で完成するものではありません。ですから当社は、施策を納品して終わりではなく、ものさしが組織に定着し、ポーラさまが自走できるようになるまで伴走し続けます。私たちの役割は、いつか「もう当社がいなくても大丈夫」と言っていただける状態をつくることです。その日まで、ポーラさまの現在進行形に並走していきます。

トライバルメディアハウスの支援

このプロジェクトで当社が担っているのは、特定の施策を代行することではありません。「本当に解くべき課題は何か」を一緒に定義し直し、想起という一本の軸で指標・調査・投資をつなぐ。そして、社内での共通言語をそろえ、意思決定を前に進めるディスカッションパートナー・PMOとして伴走することです。「指標から組織の型を変えたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

※記事の情報は取材当時のものです。

スタッフリスト

  • 小島 駿
    小島 駿
    マーケティング戦略部 部長/シニアコンサルタント

    デジタル広告の代理店、大手総合広告代理店でのプランナーを経て、2021年当社に入社。100社以上のプランニングの経験を活かし、大手企業のコミュニケーション全体の戦略立案に携わる。 事業成長を目的に 、戦略策定からその後の支援まで継続的に支援できることが強み。NewsPicks主催『売上の地図』ブートキャンプ講師。

    共著: 「業界別マーケティングの地図」(日経BP)。メディア掲載:連載「想起の教科書 KGI・KPIの設計法」「想起の真実 ブランド戦略の羅針盤」「選ばれるブランドになる 想起の実践法」(日経クロストレンド)がある。

サービス

第一想起獲得戦略コンサルティング

戦略を運用に落とし込み、第一想起を積み上げる仕組みをつくります。

支援領域

貴社のマーケティング課題を特定し、解決に向けて併走いたします。

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本ページでご紹介しているのは一例です。トライバルメディアハウスは、デジタルマーケティング領域での多くのご支援実績・知見を活かし、貴社のマーケティングを幅広く支援いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

Overview

クライアント
株式会社ポーラ
業界
化粧品・美容
支援内容
想起を軸としたブランド評価・戦略の再設計と、横断の合意形成への並走。ディスカッションパートナー・PMOとして伴走

書籍情報・外部メディア出演

再現性のあるロジックを構築し、独自のナレッジとしてまとめた20冊以上の書籍を出版しています。外部メディア出演情報もご確認ください。

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  • 私たちの特長

    施策から逆算せず戦略起点で全体を設計し、実行可能な判断基準に落とし込み成果まで推進します。

  • 支援領域

    戦略設計から実行や組織への定着までをPMOとして一気通貫で推進します。

  • メディア掲載情報

    現場で培ったナレッジやマーケティングの最新潮流を、メディアやイベントを通じて発信しています。

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