『ヌリカエ』ブランドマーケティング設計プロジェクト|誰に届けるか、を起点にしたカスタマージャーニーの分解・調査・売上設計の一気通貫支援
株式会社Speee
プロジェクトの背景|獲得型で伸ばした先に見えた天井
――プロジェクトの背景と、当時の課題から教えてください。
九島さま:当社のヌリカエは、外部塗装を考える生活者と施工会社をつなぐB2B2Cのマッチング事業です。これまではリスティング広告やアフィリエイトを中心に、ABテストを重ねながら「獲得型」で事業を伸ばしてきました。ただ、その手法に天井を感じていて、中期では明確な売上目標も掲げていた。目標と現状の差をどう埋めるかが問いだったのですが、マーケティングロードマップは引いたものの、解像度が低く、前に進めずにいたんです。課題は大きく3つありました。獲得型に偏っていたぶん、潜在顧客への解像度が低い。獲得以外のアプローチも、同じく解像度が低い。そして社内がCPA文化で、「そのうち客」をどう育てるかに、まだ踏み出せていなかった。
トライバルメディアハウスを選定した理由|受注前に重ねた5回のすり合わせ
――当社をどう知り、なぜ声をかけてくださったのでしょうか。
九島さま:きっかけはMARPSでした。Xでたまたま流れてきて、「無料でここまで学べるのか」と驚いて。そこで代表 池田さんの発信も知りました。お問い合わせは2024年1月ごろです。正直に言うと、相見積もりはしていません。念のため他もあたったのですが、事業とマーケティングをつなぐところを任せられる相手が、ほかに見当たらなかったんです。2022年にはテレビCMを別のパートナーとプロモーションとして進めていましたが、事業とマーケティングをつなぐ肝心の部分は、手つかずのままでした。
――大きなご発注です。受注前のすり合わせを5回も重ねたのは、めずらしい進め方だったのでは。
小島(当社):当初のご依頼は「ブランドマーケティングのロードマップを作りたい」でした。ただ大きな発注になるので、当初の想定をフェーズに分け、各フェーズで「やること・やらないこと」を整理した資料をご用意して、フェーズごとに区切って受注する形にしたんです。当社の価値が見合わなければ、そこで止めていただける設計でした。
九島さま:その「いつでも止められる」設計も、社内を通す後押しになりました。最終的な発注の決め手は2つです。ひとつは、窓口の自分がオーナーシップを持てること。もうひとつは、「共通言語を持つ人がつくった資料は長く使える」と確信できたことです。御社の考え方は池田さんの書籍として外部にも公開されているので、担当者が代わっても、その本を読めば同じ共通言語に追いつける。だから、つくった資料が単発で終わらず、社内のナレッジとして長く生き続ける。そこは強く意識していました。

狙いと課題|「誰に届けるのか」を起点に立て直す
――どこから手をつけたのでしょうか。
九島さま:有望なセグメントがどこかは、市場の評価で見えていたんです。でも、それを実際の売上につなげる道筋――つまり「誰に、どう届けるか」というマーケティングの設計が、社内になかった。チラシやソリューションの施策は出てくるのに、「それは、どこの誰に向けたものなのか」で議論が止まっていました。
――その流れが変わった瞬間があったそうですね。
九島さま:いまでも覚えている会議があります。ホワイトボードが、目標数字を起点とした施策や手段でどんどん埋まっていたとき、事業責任者の上野がそれをいったん消して、自分で整理し始めたんです。「軸は施策じゃない。こっち――誰に届けるか――じゃないか」と。あの瞬間が、プロジェクトの転換点でした。あれ以降、社内の共通言語が変わって、いまも現場では、まず「それは誰に向けてなのか」と問うようになっています。
小島(当社):施策から逆算するのをやめて、「誰に届けるのか」を起点に組み直す。そこで、関係者全員の見ている軸がそろいました。手段の議論から、ターゲットの特定を先に置く議論へ、順番が入れ替わった瞬間でした。
戦略の肝|7つのカスタマージャーニーを仮説化し、調査で検証する
――進め方の大きな設計と、その核を教えてください。
小島(当社):3段階で組みました。まず仮説設計。潜在顧客にはどんな人がいて、どんな行動をしていて、どんなアプローチならヌリカエを使ってもらえるか、を仮説として描く。次に調査で、定性で網羅性を担保し、定量で重みづけと優先順位づけをする。最後に、調査結果と過去データからシミュレーションし、中期のマーケティング計画に落とす。この順序です。
九島さま:市場をセグメントで切る作業自体は社内でも行っていました。そこに生活者側の動き方を重ねていったことで、攻めるべき入口の輪郭が見えてきた感覚です。
――カスタマージャーニーは7つのパターンを設計しました。なぜ7つで、どう扱ったのでしょうか。
小島(当社):ヌリカエはB2B2Cのマッチング事業なので、生活者側だけでなく施工会社(B側)の事情まで含めて見る必要がありました。セグメント、ニーズが顕在化するきっかけ、その後の調査行動、最終的な選択先――これらを組み合わせて描いていくと、代表的なジャーニーが7つの仮説として浮かび上がってきた。最初から7と決めたわけではありません。そして、無理に1つへ絞り込むのではなく、7つを仮説として立てたうえで、定量調査で検証できる状態にすることをゴールに置きました。仮説と検証を往復しながら、確からしいパターンへ整理していく進め方です。
九島さま:途中で「このジャーニーは合わないのでは」と議論をやり直したこともありました。当社だけでは描けなかった解像度だったと思います。

――生活者調査で、想定外の発見はありましたか。
九島さま:当社はそれまで、生活者へのインタビューを積極的にやっていませんでした。今回は定性で網羅性を担保するためにインタビューを重ねて、営業の場では出てこない本音が聞けた。その声を定量調査で重みづけして、優先順位をつけていく。調査の設計そのものが、当社にとって大きな学びでした。
売上の方程式と撤退条件まで握る
――事業責任者の上野さまも入っていただいて合意しました。これは社内にどんな効果がありましたか。
小島(当社):私たちは、売上を「単発の施策で上下するもの」とは捉えませんでした。認知や想起といった要素が積み重なって売上になっていく――その全体の構造を一枚に描いて、関係者で共有したんです。そのうえで、「ここがこうならなければ撤退する」という条件まで、上野さまに議論へ入っていただいて合意しました。
九島さま:ポイントは、決裁者に最初から議論に入ってもらっていたことです。撤退の基準まで握れていたので、現場が判断に迷わない。「どうなったら止めるか」が先に決まっているから、かえって前に進めやすくなりました。
プロジェクト推進|論点を整理し、決め切る
――進め方の面で意識したことと、並走の密度について教えてください。
九島さま:最初は「一緒に考えましょう」という進め方で、時間がかかっていました。それが、論点を先にそろえて、選択肢を持ち寄ってからディスカッションする会議運営に変わった。「ここを決める」というポイントに時間を集中できるようになったんです。併走していただく密度もすごくて、こちらが投げれば、すぐに返ってくる。普通のクライアントと受注先の関係を超えた距離感でした。一緒に事業をつくる仲間のような関係になれた。
小島(当社):途中から、私のほうも遠慮がなくなっていきました。お互いに要求し合える関係になって、「手段は後でいい、必要なことをしてくれ」と言っていただけたのは、伴走する側として何よりの言葉でした。

第三者だからできたこと|ディスカッションパートナー・PMOとしての伴走
――当社は「外部ベンダー」と「パートナー」のどちらに近い存在でしたか。そして、第三者が入ることにどんな意味があったのでしょう。
九島さま:パートナー、というよりPMOに近い感覚でした。社内にマーケティングが分かる人が多くない中で、ワンマンで進めなければいけない局面が多かったんです。そこに、どちらの立場にも寄りすぎず、フラットに両面から意見をくれる第三者がいた。これが要所要所で効きました。社内だけの議論だと、どうしても立場や力関係が入ってしまう。御社は利害から一歩引いた場所から、「本質的にはこうですよね」と言ってくれるんです。
小島(当社):私たちの役割は、論点を整理して、貴社が意思決定すべきポイントを明確にすることでした。貴社にしか分からない事業の中身は用意していただき、論点の交通整理は私たちが担う。そして、決裁者である上野さまに議論を前へ進めていただくために、「どの論点を、どういう順番で、どう伝えるか」まで一緒に設計しました。
九島さま:これは社内政治のような話ではなく、大きな会社で承認を通していくために欠かせない、合意形成の設計なんです。第三者が共通言語をつくってくれたことで、部門間のコミュニケーションも、経営層への説明も、一気にスムーズになりました。
伴走がもたらしたもの|社内に残った資産
――プロジェクトを終えて、社内に残った資産は何だとお感じですか。
九島さま:大きく3つあります。1つは「誰に向けて何をやるのか」で会話する文化。2つめは、生活者インタビューや調査の文化で、いまは社内で自走できるようになりました。3つめは、「ここをやったら失敗する」という失敗の芽を、一緒に削れたこと。おかげで、同じ進め方を次に再現しやすくなりました。
九島さま:事業責任者の上野ともよく話すのですが、いちばん大きな変化は、プロモーションの中での獲得の議論が中心だったところから、想起・認知から売上までの構造という視点でマーケティングを運用するようになったことだと思います。「どのターゲットにアプローチすべきか」というWhoの議論や、テレビCMの意思決定・検証にも、市場データを活用できるようになりました。残った資産を挙げるなら、想起や認知といったフレームワーク、市場データそのものの見方、テレビCMのあり方についての次への仮説、そして市場構造からマーケティングの伸びしろを見極める手触り感でしょうか。時間軸の勘所がなかったので、まず「ブランド醸成にはこれくらいの時間がかかる」という水準が、社内の共通認識になりました。一方で、産業や商材によって、ブランド醸成の難易度も、やり方も、投資の踏み方も異なる。そこも大きな学びでした。
小島(当社):相応の時間と覚悟が要る領域で、魔法のような近道はない。そこをご一緒に体感した取り組みでもありました。再現可能な「型」が貴社に残ることを、最初からゴールに置いていただいていました。だからこそ、当社が抜けたあとも回る状態を、一緒につくれたのだと思います。
今後の展望|獲得の先をどう育てるか
――同じように「パフォーマンスマーケティングが頭打ちで、ブランド醸成へ舵を切りたい」と考えるマーケターへメッセージをお願いします。
九島さま:設計をし直すことは有効です。ただ、それは魔法ではありません。時間と覚悟が要る。そこを理解したうえで取り組めば、ぶれずに進められると思います。

トライバルメディアハウスの支援
このプロジェクトで当社が担ったのは、特定の施策を代行することではなく、「誰に届けるのか」という戦略の起点に立ち返り、論点を整理し、意思決定を前に進めるディスカッションパートナー・PMOとしての伴走でした。施策から逆算せず戦略起点で全体を設計し、やること・やらないことを見極める。そして社内に共通言語と再現可能な型を残す。当社が大切にしているのは、この進め方そのものです。同じように「獲得の先」を描きたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
※記事の情報は取材当時のものです。
スタッフリスト
-
小島 駿マーケティング戦略部 部長/シニアコンサルタントデジタル広告の代理店、大手総合広告代理店でのプランナーを経て、2021年当社に入社。100社以上のプランニングの経験を活かし、大手企業のコミュニケーション全体の戦略立案に携わる。 事業成長を目的に 、戦略策定からその後の支援まで継続的に支援できることが強み。
NewsPicks主催『売上の地図』ブートキャンプにて講師を担当。共著: 「業界別マーケティングの地図」(日経BP)。メディア掲載:連載「想起の教科書 KGI・KPIの設計法」「「想起」の真実 ブランド戦略の羅針盤」(ともに日経クロストレンド)がある。
サービス
戦略を運用に落とし込み、第一想起を積み上げる仕組みをつくります。
貴社のマーケティング課題を特定し、解決に向けて併走いたします。
Overview
- クライアント
- 株式会社Speee
- 業界
- 建設・住宅
- 支援内容
- Whoの特定、カスタマージャーニーの分解、生活者調査、売上の方程式、エリア選定、クリエイティブ設計までを一気通貫で並走
その他のコンテンツ
- 私たちの特長
ソーシャル・SNS黎明期から業界を牽引してきた私たちは、企業の売上のメカニズムを構造化し、戦略と「やること」「やらないこと」を明確にして課題解決まで伴走します。
- 得意分野
マーケティングにおいて幅広く支援できる私たちの、特に知見と経験が豊富な業界・手法をご紹介します。
- 支援領域
貴社のマーケティング課題を特定し、解決に向けて併走いたします。
- 実績紹介
領域を問わず、毎年多くのプロジェクトをご支援させていただいています。私たちが事業成果へつなげたプロセスをご覧ください。
- ナレッジ
現場の課題解決に直結する実践的なナレッジや考え方を体系的に発信しています。
- 会社紹介
トライバルメディアハウスの会社概要や、出版・メディア掲載情報などをご紹介します。