第一想起は1つじゃない──CEPs(カテゴリーエントリーポイント)で変わる想起の地図の描き方
最終更新日:2026-07-21作成日:2026-07-17
「ビールといえば?」と聞かれたときの答えと、「金曜日の夕方にゆっくり飲むビールといえば?」と聞かれたときの答えは、同じとは限りません。第一想起はブランドにひとつではなく、生活者が置かれた場面の数だけ存在します。本記事では、CEPs(カテゴリーエントリーポイント)ごとに変わる想起の構造をひもときながら、自社ブランドが「どの場面で」思い出される存在になるべきかを考えます。
※本記事は、2026年7月7日開催『Tribal Marketing Summit 2026夏』における当社代表 池田の講演内容をもとに再構成したものです。

無料でダウンロードできます。生活者調査をもとに、自社ブランドが競合と比べてどれだけ「思い出されやすい状態」にあるのかを測定し、健康状態・重症度(ステージ)・改善計画までを「診断書」として提示します。売上と相関の強い「想起(メンタルアベイラビリティ)」を診ることで、売上が落ちる前──「黄信号」の段階で異変に気づくことができます。
「◯◯といえば?」の答えは、場面で変わる
少しだけ、想像してみてください。真夏、36℃の炎天下で食べるアイスといえば、何が浮かびますか。では、車でのドライブ中に食べるアイスといえば。大きな仕事を終えて、家でシャワーあがりにゆっくり食べるアイスといえば──。おそらく、3つの問いで違うブランドが浮かんだ方が多いのではないでしょうか。
ビールでも同じです。達成感を感じながら飲む一杯、海鮮鍋を囲みながらの一杯、爽やかにさっぱり飲みたいときの一杯。場面が変われば、真っ先に思い浮かぶブランドは入れ替わります。この「思い出すきっかけとなる場面・ニーズ」を、マーケティングではCEPs(カテゴリーエントリーポイント)と呼びます。
第一想起は1つじゃない──「想起の樹」という考え方
想起の樹とは、カテゴリー全体の第一想起を「幹」、CEPsごとの第一想起を「枝」として捉える考え方です。カテゴリー全体で聞いた「◯◯といえば?」の第一想起は、いわば樹の「幹」です。一方で、「鍋のときに飲むビール」「アウトドアで楽しむビール」といった場面別の第一想起は「枝」にあたります。幹で圧倒的なブランドが存在していても、枝ごとに見れば第一想起の座は入れ替わっており、それぞれの枝に別の勝者がいる──これが想起の実際の姿です。
つまり、幹で勝てないブランドにも、勝てる枝は残されています。当社の調査『第一想起白書2025』でも、歯磨き粉カテゴリーの純粋想起1位ブランドが、ニーズ別に見るとすべての場面で1位ではなく、「口臭予防」「知覚過敏ケア」など6つのニーズでそれぞれ別のブランドが最も想起されていることが確認されています。

なぜ第一想起が重要なのか──決勝戦に進めるブランドは3つ以下
生活者は、購入の場面ですべてのブランドをじっくり比較しているわけではありません。その瞬間にふと頭に浮かんだ、いくつかのブランドの中から選んでいます。この「思い出せるブランドの候補リスト」を想起集合と呼び、当社の調査では、想起集合に入るブランドは3つ以下という結果が出ています。思い出されなかったブランドは、比較検討という決勝戦に進むことすらできません。
さらに、想起の「順位」も売上を大きく左右します。『第一想起白書2025』では、歯磨き粉カテゴリーで第一想起されるブランドのメイン利用率は71.9%に達する一方、第二想起では19.2%、第三想起では14.0%でした。真っ先に思い出されるかどうかで、選ばれる確率には大きな差がつきます。
無料でダウンロードできます。知っている状態から思い出す状態、さらに真っ先に思い浮かぶ状態へと移る道筋をデータで可視化し、第一想起が選択に与える影響と、想起を獲得するうえで押さえるべき点を整理しました。消費者に選ばれるブランドを育てるヒントを得たい方は、詳細をご覧ください。
売上は「想起の幅×深さ」で決まる
ここまでを整理すると、ブランドの思い出されやすさは2つの軸で捉えられます。ひとつは想起の「幅」。いくつのCEPで思い出されるかです。もうひとつは想起の「深さ」。それぞれの場面で、競合より先に──できれば第一想起で──思い出されるかです。売上は、この幅と深さの掛け算に深く関連しています。
多くの場面でうっすら思い出されるだけでも、ひとつの場面で強く思い出されるだけでも、十分とは言えません。まずひとつの枝で第一想起の足場をつくり、隣接する枝へ幅を広げていく。これが想起を売上につなげる基本の道筋です。
なお、当社の『ブランド健康診断』では、この幅と深さに加えて、市場全体で何人に思い出されているかという想起の『広さ』もあわせて測定します。
認知はあるのに、なぜか売れない。分かれ目は「知っている」ではなく「思い出される」かどうかです。想起(メンタルアベイラビリティ)と第一想起が売上をどう左右するのか、当社の調査データとあわせて解説します。
カテゴリーエントリーポイントについて、定義・具体例・設計方法まで体系的に解説。第一想起を獲得するためのマーケティング戦略としてのCEP(CEPs)の使い方を実務視点で整理します。
どのCEPで勝つか──「資源優勢」という戦略
では、どの枝から獲りにいくべきでしょうか。ここで重要になるのが「資源優勢」という考え方です。予算も人も時間も有限です。全方位に薄く配れば、どのCEPでも競合に埋もれます。逆に、狙った一点に資源を集中すれば、全体では劣勢でも、その場面では競合を上回る優勢をつくれます。
戦略とはトレードオフです。何かをやると決めることは、何かをやらないと決めること。「どのCEPで勝ちたいか」を決め、そこにブランド連想とRTB(信じるに値する根拠)を集中して接続することが、第一想起獲得の肝になります。ただしその前提として、そのCEPを競合がすでに押さえていないか、自社に勝ち筋はあるのか、狙う価値のあるサイズなのか──現在地の検証が欠かせません。
よくある質問
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CEPs(カテゴリーエントリーポイント)とは何ですか?
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CEPsとは、生活者がそのカテゴリーを選ぶきっかけとなる場面・ニーズのことです。「残業で集中が切れて、もうひと踏ん張りしたいとき」「金曜日の夕方にゆっくり飲みたいとき」など、購買の入口となる文脈を指します。ブランドはCEPの数だけ、思い出されるチャンスを持っています。
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第一想起とは何ですか?
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第一想起とは、あるカテゴリーや場面で生活者が真っ先に思い浮かべるブランドのことです。当社の調査では、第一想起されるブランドはそれ以外のブランドと比べて、購入率・メイン利用率が大きく高いことが確認されています。
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自社がどのCEPで想起されているかを知るには?
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生活者調査によって、カテゴリー内の各CEPで自社と競合がどれだけ想起されているかを測定できます。当社では、想起の幅と深さを競合と比較して一枚の地図に可視化し、健康状態・重症度・改善計画を「診断書」として提示する『ブランド健康診断』を提供しています。
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想起集合とは何ですか?
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想起集合とは、生活者が購買の場面で思い出せるブランドの候補リストのことです。当社の調査では、想起集合に入るブランドは3つ以下という結果が出ています。思い出されなかったブランドは、比較検討という決勝戦に進むことができません。
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メンタルアベイラビリティとは何ですか?
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メンタルアベイラビリティとは、生活者が購買の場面でそのブランドを思い出しやすい状態のことです。「想起の幅(いくつのCEPで思い出されるか)×深さ(各場面でどれだけ強く思い出されるか)」の掛け算で決まります。
まとめ|自社の「想起の地図」を描くことから
第一想起は1つではなく、CEPsの数だけ存在します。幹で勝てなくても、勝てる枝はある。その枝を見つけ、資源を集中し、幅を広げていく──そのすべての出発点は、自社ブランドがいま、どの場面で、どれだけ思い出されているかを正確に知ることです。まずは貴社ブランドの「想起の地図」を描くことから始めてみませんか。『ブランド健康診断』の詳しい資料は、下記からご請求いただけます。
無料でダウンロードできます。生活者調査をもとに、自社ブランドが競合と比べてどれだけ「思い出されやすい状態」にあるのかを測定し、健康状態・重症度(ステージ)・改善計画までを「診断書」として提示します。売上と相関の強い「想起(メンタルアベイラビリティ)」を診ることで、売上が落ちる前──「黄信号」の段階で異変に気づくことができます。
貴社のマーケティング課題を特定し、解決に向けて併走いたします。
監修
本記事は、マーケティング戦略・ブランド戦略の専門家である池田紀行 の監修のもと作成しています。トライバルメディアハウス代表として、企業のマーケティング戦略設計および第一想起獲得に関する支援実績を多数有し、本記事はその実務知見に基づいて構成されています。
池田紀行
トライバルメディアハウス代表。マーケティング戦略・ブランド戦略領域を専門とし、第一想起を起点とした戦略設計・IMC支援を行う。企業のマーケティング変革支援を多数手がける。