実績紹介

遠くに石を投げて、波紋で気づいてもらう──アレジオン×VTuberコラボMVという一手

エスエス製薬株式会社

花粉シーズンのプロモーションは、季節が終われば役目を終える。毎年ゼロから話題をつくり、シーズンとともに消えていく——多くのブランドが抱えるこの課題に対し、3年続くコラボレーションの3年目で当社が提案したのは、ミュージックビデオの制作でした。相手は、VTuberグループ「ホロライブ」に所属する3名。公開から時間が経ったいまも、再生数は伸び続けています。

このプロジェクトを担当した当社薦田果聖と、作詞をはじめMVの企画・制作を手がけた松井涼、そしてプロジェクト統括の遠藤に、広報が聞きました。

実績のポイント
  • キャンペーン終了後も再生が伸び続けるMV(14万回再生)を制作し、翌年以降も歌い継げるブランド資産に。
  • 医薬品としての正確な情報と、VTuberファンに刺さる表現を、同じ楽曲のなかで両立。「いま買う人」に効くマストバイ施策と、「いつか必要になる人」の記憶に積み上がるMVを切り分け、今回は後者を主役に設計。

なぜ、MVだったのか

――今回、メインコンテンツにMVを据えた経緯を教えてください。

薦田:昨年度まではWeb CMも制作していました。今回はそれに代えて、さらに生活者に見続けてもらえる施策はないか——先方でもそう考えていらっしゃいました。そこで、楽曲をつくりたいというお話をいただいたんです。楽曲であれば契約に縛られず、ずっと置いておくことができます。それならつくっていきたい、というところから始まりました。

あらためてWeb CMという選択肢もありましたが、CMよりも楽曲というコンテンツとして存在するほうが、VTuber文化のなかにいる方たちに浸透しやすいのではないか。そして、繰り返し聴いてもらえるのではないか。そう考えました。

このプロジェクトには、性質の異なる2種類の施策が同居しています。おみやげやレシート応募といったマストバイキャンペーンは、いま花粉薬を買おうとしている人に効く短期の施策。一方でMVは、いまはまだ必要としていない人の記憶に、少しずつ蓄積されていく中長期の施策です。両者は狙う相手も、効き方も、測るべき時間軸も異なります。今回の主役は後者でした。

――設計はどう進めたのでしょうか。

薦田:企業視点の楽曲になりすぎないように、VTuberのファンの方がどういう楽曲を視聴しているのか、どういう曲が人気なのか、というところから方向性を設計していきました。そのうえで、作詞から映像までの制作は、松井が担当しています。

前例のない企画が、なぜ通ったのか

――当社にMV制作の実績があったわけではありません。それでも任せていただけた理由をどう見ていますか。

遠藤:過去2年間の実績が大きいと思います。先方のご担当者さまが言ってくださっていたのは、VTuberのファンの心理を誰よりも分かっていて、それをちゃんと言語化して施策に落としてくれる、というところ。そこが評価いただいているポイントでした。

薦田:当社にWeb CM制作の実績があったことと、VTuberへの理解があったことで、それならMVも当社に、という流れになりました。ちょうどそのタイミングで松井が入社したことも大きかったと思います。提案する側としても、これはできる、という確信がありました。

CMなのか、MVなのか

――松井さんは、作詞から映像の演出まで、MVの制作全体を担当されました。もっともこだわった点はどこですか。

松井:CMなのか、MVなのかというバランスですね。歌詞も含めて全部プロデュースさせてもらったのですが、表現も歌詞も薬機法のチェックが入る。とはいえプロモーションではあるし、MVにはしたい。伝わる表現、VTuberのファンに特に伝わる表現でありながら、商品のことが理解できる落とし込みになっているか。そこがいちばんこだわった部分です。

だからあえて、ネット文化というか、VTuberファンの属性に沿ったいじり方だったり、楽曲のリズム感だったり、動画のテンポ感だったりを、VTuberの人たちが広告と思わないような落とし込みにする。それを全部意識しました。

まず、商品名を連呼するサビとテンション感で「なんだこれ!?」と思ってもらいたかった。掴みのあとは、どうすれば商品の特徴や成分を堅苦しくなく伝えられるかを考えました。一方的に訴求ポイントを並べても、押しつけがましくなってしまいます。できるだけ受け止めてもらいやすい落とし込みを探した結果、受け答えが自然と生まれるクイズ形式の寸劇になりました。本当はポエトリーラップ調にしたかったのですが。

あとは、カオスさを出したかったので、ネット文化に親しみのあるVTuberファンに向けて、思わず口にしたくなるようなオマージュや小ネタを、あえて盛り込みました。

――タイトルからして、独特の世界観です。どんな気持ちでつくられたのでしょうか。

松井:エスエス製薬アレジオンらしくないところに、石を投げたかったんです。遠くに石を投げて、その波紋で新規層やライトユーザーにまで伝わってほしかった。近いところに石を投げても意味がありません。遠くに投げて、その波紋が届くからこそ、なんだこの揺れは、なんだこの振動は、と気になって気づくじゃないですか。だからこそ、生活者が想像していないところ、クライアントが想像していないところ——遠いところにあえて投げる。その「らしくなさ」を、歌詞から映像演出まで、総合的に意識しました。

あとは、コラボレーションしたVTuber3名それぞれに歌ってもらうパートをつくるとなったときに、合いの手や掛け声を入れたり。それから前半には、あえて寸劇のようなセリフ調のパートをつくりました。どんな曲調や表現なら、VTuberに親しんでいる方が違和感なく前向きに受け取れるか。ノイズなく楽しめるか。自分も一人のファンとして、フラットな視点で落とし込んでいきました。

二つのステークホルダーの、気持ちのいいところを探す

――進めるうえで、難しかったのはどこですか。

松井:今回は商材的に、薬機法が関わってくる。ステークホルダーが二つあって、エスエス製薬さまという企業に対する薬機法で気をつけなければいけない表現と、ブランディングを大切にされているVTuberのIP。この二つのステークホルダーがいて、双方にとって最適な表現方法を見出し、納得していただくことが、いちばん難しいところでした。

お互いが混ざり合ってマリアージュできて、お互いがいい落とし込みだねと思えるところまで持っていく。そのために時間をかけましたね。毎週のエスエス製薬さまとの定例ミーティングで、決め打ちで持っていくというより、こういう表現があってこういう表現もあるけれど、どのあたりが許容範囲なのかを探りながら、これまでの殻を破るような表現も、あえて強気に進言していきました。とにかく、クライアントが保守的にならないように気をつけていました。生活者の視点に立ったときに、共感や反応が生まれる表現になっているか。そこへの納得感と目線合わせがいちばん大事だと考え、その尺度を毎週アジャストしていきました。

――慎重に配慮するほど、安全な表現に落ち着きそうです。

松井:そこなんです。表現に気をつけすぎると商品に寄ってしまい、結局は生活者から見て「これはCMだ」という印象を拭えません。ですから、ネット文化に触れてきた人たちが反応するような、ツッコミどころのある演出をあえて散らしました。

これは伝わる表現なのか、という不安はクライアントにも確かにありました。ただ、自分のなかでは落とし込みのイメージ絵も、コメントや会話が広がっていく光景もクリアに見えていたので、自信を持って目線合わせをしました。ご納得いただくまでの時間や対話は、面倒だと避けられがちなところです。でも僕は、ここをいちばん大事にしていますし、見えている景色がクライアントと重なる瞬間が好きなんです。


薦田:クライアントにも、VTuberファンの文化にちゃんと寄り添いたい、という気持ちが強くありました。ただ、どこまで振り切れるかは先方も経験がありません。ですから、楽曲の参考をお出ししたり、歌詞も楽曲も何パターンもお持ちしたうえで、どこまで振り切れますか、という形でご相談していきました。じっくり準備を重ねてから、制作に入っています。

解像度は、チームで引き上げた

――VTuberの世界観をどう掴んだのでしょうか。

松井:ステークホルダーが二つあって、その解像度をどう引き上げるかに困ったという話をしましたが、エスエス製薬さまは直接会話すればいい。ただVTuber側の解像度、そこに対するユーザーの気持ちの解像度は、薦田の言葉、薦田の目を借りなければ、ここまで落とし込めませんでした。

薦田のヒアリングがすごく役に立ちました。VTuberの気持ちのいいところ、表現、いじり代があるところ。最初にタレント一人ひとりについて、こういう表現は嫌かな、というのを確認したことが、最終的な落とし込みにものすごく役立ちました。

狙ったのは、「花粉の市販薬といえば」

――この施策で、どんな想起を取りにいったのでしょうか。

薦田:ホロライブやVTuberのなかで、花粉の市販薬といえばアレジオンだよね、というところを固めたかった。それがいちばん大きいですね。花粉薬は、だいたいどれも効くと思われていて、割とみんな浮気してしまうところがあるんです。もうアレジオンしか買わない、という状態になってほしいと考えました。

アレジオンは、1日1錠で済むことと、眠くなりにくいことが、カテゴリーエントリーポイントとして大きい。なので曲にも、そういう歌詞を含めています。ブランドが思い出される「きっかけの入口」を、当社ではカテゴリーエントリーポイント(CEPs)と呼んでいます。生活者は「花粉薬」という言葉そのものより、「毎日飲むのが面倒」「日中眠くなると困る」といった具体的な場面から商品を思い出す。だからこの入口をいくつ押さえられるかが、売上を左右します。今回のMVが担ったのは、その入口とブランド名を、一つの楽曲のなかで同時に、しかも繰り返し記憶に残すことでした。

その狙いは、サビで最も鮮明になります。「眠くなりにくい、花粉に速攻、医療用成分を配合!」「そして、そして、そして、24時間ずっと効くのだ!」——生活者が花粉薬を選ぶときに効いてくる要素が、掛け声のリズムに乗って畳みかけられていく。

そして曲は、こう締めくくられます。「たった1錠で24時間ずっと効く。わたしオン、アレジオン!」。タレントがブランドを名乗ることで、楽曲そのものが想起のスイッチになる。曲名にもなっている「アレジオン、あれ?」という語感の遊びも含め、聴くたびにブランド名が耳に残る設計です。

薦田:小さくスポットでやると、ファンダムのコラボ施策に期待されている水準を超えられず、競合に浮気されがちです。それよりも、一つの案件を大々的に展開するほうが、みんなでお祭りのように盛り上がれる。ブランドへの愛着や感謝も生まれやすくなります。

成果──狙いどおりの反応と、伸び続ける再生数

――結果はいかがでしたか。

松井:再生数よりも、エンゲージメントがすごく高いなとコメントを見ていて感じました。ここはこういうリアクションをされます、ここはこうです、とクライアントMTGで事前に言っていたことが、そのままコメントに書かれているんです。狙いどおりでした。

遠藤:本編のほかに、ループ版も追加で出していて、そちらも動いています。

MVは公開から時間が経ったいまも再生が伸び続け、14万回に達しています。キャンペーン期間が終わったあとも価値が積み上がっていく——シーズン施策としては理想的な形です。

想起は、一度の施策で完成するものではなく、累積して効いてくるものです。今回制作したMVは、形を変えながらでも歌い継いでいける余地を持った資産であり、この「続けていける可能性」こそが、成果の本体だと当社は考えています。

3年の下積みが、挑戦を可能にした

――3年続くプロジェクトです。何が続く理由になったと思いますか。

薦田:最初の段階から、同じIPと続けていくことが大事ですよ、という話をしながらやってきた案件でした。そこを先方もすごく信じてくださって、納得したうえで、ここまで続けられたのかなと思います。毎年やると、そのたびに反省が出てくる。次はこうしよう、というところを毎年話し合ってこられました。

MVをつくるという、あまりできないことを先方がチャレンジングに考えて、やりたいと言ってくださった。それは、下積みがずっとあったからだと思います。これを最初からできるようなクライアントではなかった。新しいことをやりたいけれど、なかなか社内で難しいよね、というところから、コツコツやってきたことでできたのかなと思っています。

遠藤:毎年しっかりアップデートを重ねながら向き合い続けてこられているのは、プロジェクト担当者さま達に信頼していただけているからだと思っています。それがアレジオンさんにとってのブランド資産になっていくことを目指して、私たちも伴走しています。

――最後に、この事例をどう捉えていますか。

松井:クライアントは、自分たちにない価値観や、自分たちが見たことのないクリエイティブを、本当は心待ちにしていると思うんです。ただ、それを説得したり、断定形で言い切ったりする自信、押しのけて説得するマンパワーやコミュニケーションコストはかかります。そこに恐れをなさず、自分たちの価値、自分たちのバリューをしっかり出していく。その姿勢を貫いたからこそ、いい落とし込みができた事例だったと思います。

トライバルメディアハウスの支援

このプロジェクトで当社が担っているのは、特定の施策を代行することではありません。「本当に解くべき課題は何か」を一緒に定義し直し、想起という一本の軸で、コンテンツと商品理解をつなぐ。そして、立場の異なるステークホルダーのあいだで最適解を探しながら、企画から制作・効果測定まで伴走することです。「シーズン施策を、毎年ゼロからではなく積み上がる資産に変えたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

※記事の情報は取材当時のものです。

Overview

クライアント:エスエス製薬株式会社さま
業界:製薬(一般用医薬品)
対象ブランド:アレジオン
支援内容:VTuberコラボレーションによるプロモーション施策の企画・制作・効果測定への伴走(MV制作、マストバイキャンペーン、Live配信、SNS運用)
起用IP:百鬼あやめ、兎田ぺこら、常闇トワ(©︎ COVER)

スタッフリスト

薦田果聖(プランニング)
松井涼(MV企画・作詞・クリエイティブディレクション)
遠藤麻衣子(プロジェクト統括)

支援領域

貴社のマーケティング課題を特定し、解決に向けて併走いたします。

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本ページでご紹介しているのは一例です。トライバルメディアハウスは、デジタルマーケティング領域での多くのご支援実績・知見を活かし、貴社のマーケティングを幅広く支援いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

Overview

クライアント
エスエス製薬株式会社
業界
医薬品

書籍情報・外部メディア出演

再現性のあるロジックを構築し、独自のナレッジとしてまとめた20冊以上の書籍を出版しています。外部メディア出演情報もご確認ください。

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    施策から逆算せず戦略起点で全体を設計し、実行可能な判断基準に落とし込み成果まで推進します。

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    戦略設計から実行や組織への定着までをPMOとして一気通貫で推進します。

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