ソーシャル化の設計。「自分ごと化」を生む興味喚起と逆流ファネル

最終更新日:2026-05-22作成日:2026-05-21

ソーシャル化とは、既存の行動やメディアに、人と人のコミュニケーションが介在することで、価値や意味が変化する現象です。

いま、多くの企業が直面している課題は、「認知はあるのに興味が動かない」という問題です。背景にあるのは、商品もサービスも一定以上の品質を持つ全方位コモディティ時代の到来です。この環境では、単に広告を出して認知を獲得するだけでは不十分です。重要なのは、生活者の無関心を突破し、自分ごと化を促すこと。その鍵になるのが、ソーシャル化による情報伝播構造の変化です。

本記事では、ソーシャル化の本質、4つの◯◯ごと、自分ごと化設計、逆流ファネル、そして現代の興味喚起の考え方を整理します。当社代表・池田紀行の共著『ザ・マーケティングイシュー』(日経BP)をベースに、書籍の知見をBtoB領域でのマーケティング支援に携わる当社の視点から、独自考察独自考察を交えて再構成しています。

この記事はこんな方におすすめです

  • 広告認知はあるが、購買や検討につながらない
  • 生活者の興味喚起に課題がある
  • SNSやUGCを活用した情報設計を見直したい
  • 自分ごと化の考え方を実務に落としたい
  • 第一想起につながる情報設計を考えたい

この記事のポイント

  • ソーシャル化とは、人と人のコミュニケーション介在による価値変化
  • 現代マーケティング最大の壁は無関心
  • 「好き」の反対は「嫌い」ではなく無関心
  • 広告だけで他人ごとを自分ごと化するのは難しい
  • 世の中ごと・仲間ごとを経由した情報設計が重要
  • Instagramなどでは「興味→認知」の逆流ファネルが起きている

ソーシャル化とは何か

ソーシャル化とは、これまで存在していたモノやコトに、人と人のコミュニケーションが介在することで、従来の意味や価値が変わる現象です。X、Facebook、Instagram、TikTok、LINEなど、次々に新しいプラットフォームが登場します。しかし「次に流行るSNSは何か」だけを追っても、本質を見誤ります。

本当に重要なのは、そのSNSが何をソーシャル化したのかという問いです。

人気になるサービスは、まったく新しい生活習慣をゼロから作り出したというよりも、これまであった行動や習慣にコミュニケーションの要素を付加し、新しい意味と価値を生み出していることが多いからです。

日記とカメラに見るソーシャル化

ソーシャル化を理解するうえでわかりやすいのが、日記とカメラの変化です。

1980年代の日記は、誰にも見られたくない個人的な内面をつづるものでした。書いた日記は、引き出しの奥にしまうのが当たり前でした。しかし現在では、noteやInstagramのストーリーズなどで、日記のようなコンテンツを公開発信することが当たり前になっています。多くの人は投稿時に、一人でも多くの人に見てもらいたい、いいねやコメントがほしい、会話のきっかけになってほしいと考えます。

かつて誰にも見られたくなかった日記が、人と人のコミュニケーションの起点になるものへと変化した。これが日記のソーシャル化です。

カメラも同様です。かつて写真は、記録や保存のために撮るものでした。しかし現在、人々は食事、旅行、子どもの成長、日常の風景を、SNSに投稿し、人とつながり、反応や評価を得るために撮影しています。カメラや写真は、記録・保存のツールから、人と人をつなぐコミュニケーション手段へと変化しました。

これがカメラのソーシャル化です。

検索もソーシャル化している

検索もまた、ソーシャル化が進んでいます。かつて情報探索といえばGoogleやYahoo!でした。しかし現在では、ファッション、旅行先、ホテル、飲食店、コスメ、家電など、多くのカテゴリで検索場所が多様化しています。店舗の雰囲気はInstagramで見る。電車の遅延情報はXで確認する。マニュアル動画はYouTubeで探す。レストランは食べログやGoogleマップで比較する。インテリアの参考はPinterestで探す。

このように、目的や文脈に応じて、検索の場所そのものが変化しています。さらに重要なのは、検索結果として表示される情報の多くが、企業ではなく一般生活者によって生成されている点です。Instagramの投稿、Googleマップのクチコミ、YouTubeのレビュー動画、食べログの評価、ECレビュー。これらはすべて、生活者の声です。

検索のソーシャル化とは、情報探索の場所が多様化しているだけではありません。検索結果として表示されるコンテンツの生成主体が、企業から生活者へと移っている現象です。

全方位コモディティ時代に興味喚起が重要になる理由

現代のマーケティングコミュニケーションで、もっとも獲得が難しく、もっとも価値があるのは「興味」です。理由はシンプルです。現代の市場は、かつてないほど製品とサービスにあふれた超高度成熟社会だからです。

どの商品を選んでも一定以上の品質が保証されている。各社の技術レベルが横並びになり、明確な性能差を感じにくい。その結果、「どれを買っても大差ない」と感じる生活者が増え、価格競争が激化します。さらに、生活者は毎日膨大な広告や情報に接触しています。この環境では、広告で認知を上げるだけでは、購買にはつながりません。

生活者の心に一瞬でも引っかかり、もっと知りたいと思ってもらう。つまり興味を喚起することが、マーケティングコミュニケーション最大の論点になっているのです。

認知はお金で買えるが、興味は買えない

広告予算を増やせば、認知度はある程度まで高められます。しかし、認知が興味や購買意欲につながるとは限りません。成熟市場で生活者に「なぜ買わないのか」を尋ねると、「広告で見て知っているが、興味がない」という回答が多く返ってきます。認知はあっても、興味が動いていないのです。

最大の障壁は無関心

生活者の多くは、日々の行動を無意識の習慣で行っています。朝の身支度、通勤経路の選択、週末のスーパーでの買い物など、多くの行動は過去の経験に基づく自動運転です。

スーパーで数十品目を短時間で選べるのは、毎回じっくり比較検討しているからではありません。多くの選択が無意識に行われているからです。この自動運転モードの生活者をいったん立ち止まらせ、別のブランドに意識を向けてもらうことが、現代マーケティング最大のハードルです。

よく「好き」の反対は「嫌い」ではなく「無関心」と言われますが、マーケティングにおいても同様です。嫌いも好きも、共通しているのは関与があることです。関与が高いから好きになり、関与が高いから嫌いにもなります。もっとも手強いのは、何の感情も抱かない無関心の状態です。

広告露出を増やしても、興味のないものは興味を持たれません。だからこそ、無関心を突破するための情報設計が必要になります。

無関心を突破する「自分ごと化」と「逆流ファネル」の設計

4つの◯◯ごとで自分ごと化を設計する

生活者の興味を喚起するためには、自分ごと化の設計が欠かせません。そのために使えるのが、「4つの◯◯ごと」というフレームです。

段階状態
他人ごと商品やサービスが自分とは無関係だと認識されている状態
世の中ごと社会全体で話題になっている状態
仲間ごと友人・同僚・趣味の仲間など、特定のコミュニティ内で話題になっている状態
自分ごと商品やサービスが自分にとって意味のある、必要なものだと認識されている状態

多くの商品やサービスは、生活者にとって最初は他人ごとです。その状態から、広告だけで一気に自分ごと化させるのは簡単ではありません。そこで重要になるのが、世の中ごとや仲間ごとを経由する情報設計です。

たとえば登山にまったく興味のない人に、「山に登ろう」と広告で訴えても響きません。しかし親しい友人がSNSで山登りの写真を投稿し、「最高に楽しかった」と盛り上がっていると、少し気になります。さらにテレビやニュースで「若者の間で登山が人気」と報じられると、自分も一度くらいやってみようかなと思う可能性が出てきます。

このように、他人ごとから自分ごとへ直接ジャンプさせるのではなく、仲間ごとや世の中ごとを経由して、徐々に自分ごと化を促すことが重要です。

4つの◯◯ごとを実務に落とす方法

4つの◯◯ごとは、単なる概念ではありません。実際のマーケティング施策に落とし込むことで、興味喚起の設計に活用できます。

状態施策例
他人ごとPR・話題化・ショート動画
世の中ごとマス露出・ニュース化・調査PR
仲間ごとUGC・コミュニティ・SNS共有
自分ごと比較導線・レビュー・CRM・営業接点

重要なのは、他人ごとから自分ごとへ広告だけでジャンプさせようとしないことです。まずは「世の中で話題になっている」「仲間が話している」という状態を作る。その後に、レビュー、比較記事、導入事例、セミナー、店頭体験などを通じて、自分に関係があると感じてもらう。

この段階設計が、ソーシャルメディア時代の情報デザインです。

興味が認知を駆動する逆流ファネル

従来のマーケティングファネルでは、認知、興味、理解、購買意向、購買の順に進むと考えられてきました。

しかし、Instagramの発見タブやTikTokのおすすめ欄のような受動的な情報接触では、興味が先に立ち上がり、その後に認知が生まれることがあります。

たとえば、Instagramで偶然かっこいい登山テントの写真を見る。ブランド名は知らないが、気になる。投稿をタップし、ハッシュタグを見て、メーカー名を知る。さらに検索して、商品ページを確認する。この場合、最初に起きているのは認知ではなく興味です。興味が認知を駆動しています。

これが、逆流ファネルです。

ソーシャルメディア時代の情報設計では、能動的な検索行動だけでなく、受動的な情報接触で興味を喚起し、その後に認知や理解へつなげる設計が重要になります。

ゴールは第一想起の獲得

ソーシャル化による興味喚起は、単なる話題化で終わるものではありません。最終的に重要なのは、そのカテゴリが必要になった瞬間に思い出されるかどうかです。

旅行先を選ぶとき、コスメを買うとき、SaaSを比較するとき、マーケティング会社に相談するとき。生活者や企業担当者は、多くの場合、最初に思い浮かんだ数ブランドの中から比較を始めます。

ソーシャル化による仲間ごと化・世の中ごと化は、最終的には想起集合に入るための活動であり、第一想起を形成する活動でもあります。興味を持たれないブランドは、想起されません。想起されないブランドは、比較の土俵に上がれません。

だからこそ、ソーシャル化時代のマーケティングでは、単なる認知拡大ではなく、興味喚起を通じた第一想起形成までを設計する必要があります。

当社の支援

当社(株式会社トライバルメディアハウス)は、ソーシャルメディア時代のIMC設計を、戦略策定から組織への定着までPMOとして一気通貫で支援しています。IMC戦略、TalkabilityのあるSNS・PR連動企画、ファンダムマーケティング、OOH・音声プロモーション、第一想起獲得戦略など、施策単体ではなく全体構造から設計します。

「広告・PR・SNSが分断している」「話題化はしても売上につながらない」「第一想起を強化したい」といった課題がある場合は、戦略全体の再設計からご相談ください。

支援領域

貴社のマーケティング課題を特定し、解決に向けて併走いたします。

よくあるご質問(FAQ)

ソーシャル化とは何ですか?

ソーシャル化とは、これまで存在していた行動やメディアに、人と人のコミュニケーションが介在することで、価値や意味が変化する現象です。日記が個人的な記録から人とつながる発信になったり、カメラが記録のツールからコミュニケーション手段になったりする変化が代表例です。

自分ごと化とは何ですか?

自分ごと化とは、商品やサービスを「自分にとって意味のある、必要なもの」として認識する状態です。マーケティングでは、他人ごと、世の中ごと、仲間ごとを経由して、自分ごと化を促す設計が有効です。

なぜ広告で興味を喚起するのが難しくなったのですか?

商品やサービスの品質が横並びになり、生活者が膨大な情報や広告に接触しているためです。認知は獲得できても、「知っているが興味はない」という状態が増えています。

逆流ファネルとは何ですか?

逆流ファネルとは、従来の「認知→興味」ではなく、InstagramやTikTokのような受動的な情報接触をきっかけに、「興味→認知」の順で進む現象です。ブランド名を知らない状態で興味を持ち、その後にブランドを認知する流れを指します。

自分ごと化を進めるには何から始めればよいですか?

まず、自社の商品やサービスが生活者にとって「他人ごと」「世の中ごと」「仲間ごと」「自分ごと」のどこにあるかを整理することです。そのうえで、SNS、PR、UGC、レビュー、比較導線などを使い、次の段階へ進める情報設計を行います。

まとめ

ソーシャル化とは、SNSが増えることではありません。人と人のコミュニケーションが、これまで存在していた行動やメディアの意味を変えていくことです。

現代のマーケティングで難しいのは、認知を取ることではなく、無関心を突破し、興味を生むことです。

そのためには、広告で一方的に訴求するだけでは不十分です。世の中ごと、仲間ごと、自分ごとへと段階的に情報を設計し、最終的に第一想起につなげる視点が求められます。

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監修

本記事は、マーケティング戦略・ブランド戦略の専門家である池田紀行 の監修のもと作成しています。トライバルメディアハウス代表として、企業のマーケティング戦略設計および第一想起獲得に関する支援実績を多数有し、本記事はその実務知見に基づいて構成されています。

池田紀行 プロフィール

トライバルメディアハウス代表。マーケティング戦略・ブランド戦略領域を専門とし、第一想起を起点とした戦略設計・IMC支援を行う。企業のマーケティング変革支援を多数手がける。

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