2015/09/18

なぜ今、共創マーケティングなのか~「顧客とともに体験をつくりあげる」ことの重要性を考える

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※本記事は、当社共創マーケティング部 宮本昌尚によるMarkeZineへの寄稿記事を、MarkeZine編集部許諾の元、転載しています


注目が集まりつつある「共創マーケティング」とは何か、事例を交えて紹介する本連載。最終回は共創マーケティングが注目される1つの背景となっている「顧客とともに体験をつくりあげる共創マーケティング」を紹介します。

 

これからのマーケティングに求められる文脈価値

商品のコモディティ化が進み、機能・スペックなどによる差別化が難しくなる中で、文脈価値(顧客によって定義され、経験を通じて得られる価値)を重視したマーケティングが進んでいます。例えば、あなたがデジタルビデオカメラのマーケティング担当だとしたら、ホームページで何を訴求するでしょう。「スマートフォンと違って4K画質で撮れる」「他商品と比べて最小、最軽量」「手ブレしない新機能」などの機能的価値を候補にあげるのではないでしょうか?

さて、ここで見て欲しいのがアクションカメラGoProのサイトにある、「活動別お買い物」というメニューです。そこには、カヌー、サーフィン、自転車、音楽などのアクション別に、撮影できるイメージと商品が紹介されています。つまり、GoProを買えば、どのような映像を撮れるのかを疑似的に体験できるようになっているわけです。

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GoProのサイトの「活動別の商品紹介」

生活者がモノ消費からコト(体験)を消費するスタイルに変化していく中で、ビデオカメラというモノではなく、どのような文脈の中で顧客が利用すると価値が最大になるのか、という文脈価値を強く意識した訴求をしています。

では、商品が国語辞典ならばどうやって訴求しますか? 「掲載語彙数」「文字の大きさ、見やすさ」でしょうか。小学館の大辞泉は「生きている」国語辞典として、価値を伝えています。

「人生」「仕事」「心」「旅」など10の言葉の意味を「あなたの言葉を辞書に載せよう」というサイトで生活者から募集し、応募された語釈を編集部が選定のうえ、デジタル大辞泉に掲載しているのです。実際に、2014年に掲載された言葉としては次のものがあげられます。通常の辞書ではありえない、しかし、その語彙を見つけると辞書を見ることが楽しくなるような言葉たちです。

【青春】成人が後悔し、中年が懐かしみ、老人が忘れるもの。
【結婚】「自由な不安」が「不自由な安心」に変わること。

約30万語という膨大な掲載語彙数に比べれば、10語の言葉はほんの一部に過ぎません。しかし、生活の中で無意識に使っている言葉には様々な思いが詰まっていることを、この施策を見た人は感じることができます。Wikipediaは、一部のプロフェッショナルがつくる一般的な辞書ではなく集合知によってつくられています。言葉の正しい意味を知るという意味では大辞泉と同じように共創で作られています。一方、この大辞泉は、生活者一人ひとりの人生観や創造性によって言葉の意味や定義を思い思いに披露して行く、それに共感をするという(言葉の正しい意味を理解するという一般的な辞書の価値とは違う)文脈の価値を創造しています。

150918_image02大辞泉「あなたの言葉を辞書に載せよう」

 

価値共創のためのサービス・ドミナント・ロジック

製造業など、これまでモノを売ることで価値を創出してきた企業は、顧客の新たな体験をどのようにつくればよいでしょうか? その考え方に、サービス・ドミナント・ロジック(以下、S-Dロジック)というものがあります。

S-Dロジックとは、顧客にとっての価値をモノかサービスかで考えるのではなく、「モノもサービスも」包括的に捉え、企業が顧客と共に価値を創造する「価値共創」の視点からマーケティングを行う考え方です。例えば、あるウェアラブルメーカーは現在、利用シーンを顧客とともに考え、アプリケーションを共創することで、ウェアラブル機器を売るだけでなく、ウェアラブル機器を使うことで体験できる文脈価値をつくりだす支援をしています。一方、先ほど取り上げた大辞泉は生活者から語釈を集め、辞書をつくる工程を生活者と共創することで文脈価値を作り出しています。

 

文脈価値の創出に必要な視点とは

読者のみなさんの商材において、文脈価値をつくれるタイミングはどこでしょうか。購買前、購買時、購買後、どこに顧客接点をつくり、新たな体験を作り出せるでしょうか。

北米トヨタのブランド「Scion(サイオン)」は、若年層をリサーチする中で個性を表現する手段として自動車を利用している人のトライブ(共通する趣味・嗜好、考え方をもった集団)を発見しました。彼らは運転にかける時間と同じくらいの時間を自動車の装飾、カスタマイズにかけており、ファンのコミュニティやイベントに参加しています。

そこで、トヨタはカスタマイズ用のパーツやアクセサリーの製造会社にサイオンの製造プロセスを開放し、サイオン用の製品を作りやすくすることで、カスタマイズをより楽しめるようにしました。また、好きな音楽や出身地に関するシンボルを組み合わせた自分だけのエンブレムを作成できる「Scion Speak(サイオンスピーク)」というサイトを作りました。参加者は自分だけのエンブレムをステッカーにしたりSNSに投稿したり、ファンのコミュニティのプロフィール画像にすることで、個性を表現できます。

自社がつくり出せる文脈価値を知るには、これまでのモノをつくるためのリサーチに加え顧客の体験をより深く知るリサーチが必要です。楽しい、ワクワクする体験を探し出し、その製品はどのような文脈で利用されると価値が最大になるのかを考えます。そしてその文脈価値が、顧客同士の共創によってさらに高まる場合、共創型のサービスや場をつくりあげることができます。

また、サービスは一度作って終わりではありません。既存顧客の中でもサービスに協力してくれるパートナーから継続的に意見を聞き、サービスを改良していくためには共創コミュニティが有効です。

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文脈価値をパートナーと共創する

 

競合はソシャゲ、共創プラットフォームを育むために

体験の中には、一人での体験よりもまわりの仲間と共有したほうが楽しく感じられるものがあります。NIKE+は走るという体験を、走った速度、距離などとして記録できます。その記録を仲間と共有することで、競争意識が高まるなどの体験が生まれています。このような、体験の共有ができる場が共創プラットフォームです。

共創プラットフォームは時間、距離的制約を超えて多くの人が参加するために、スマートフォンなどからアクセスできるようアプリや、ウェブサイトとして作られるケースが多く、コミュニティの機能などが含まれています。生活者の時間を使って体験してもらう場となるため、ソーシャルゲームなどが競合になります。ゲームよりも楽しい体験を提供するためには、リアルとの連動が有効です。

自分の意見で辞書が作り変えられる、イベントで自分のカスタマイズした車や、自分だけのエンブレムを自慢できる。こういったリアルとの連動は、リアルなモノをつくっている企業が体験を提供する上での優位性です。

体験を生み出す共創プラットフォームは、その場にいる体験自体を価値と感じてもらえるかどうかが重要です。このため、重要なKPIはプラットフォームに参加し続けてくれるかの継続率で、継続していく中で生活者が顧客に、顧客がパートナーに成長しているかを見ていきます。

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文脈価値自体を生み出す共創プラットフォーム

 

壁はある、でも、それ以上にやるべき理由がある

共創マーケティングで文脈価値をつくる取り組みはまだ始まったばかりです。この成功のためには、越えなければならない壁がいくつもあります。例えば、モノ中心の考え方で企業の組織が形成されているため、文脈価値を提供するサービスを担当する部署がない。中長期的な施策であるため、成果が出るまでは時間がかかる。生活者と共創していく手法が確立されていないなどがあります。

しかし、モノ(機能的価値)だけで差別的な競争優位性を獲得することはますます難しくなっています。マーケティングの競争ドライバーは、機能的価値から情緒価値へ、そして情緒価値から文脈価値へと移行しつつあります。そして、その文脈価値は、顧客(仲間)同士がつながり、様々な活動を共創した方が、より高くなる領域が増えています。

共創マーケティングとは、自社のブランドを愛している顧客と、顧客がより一層楽しんだり、熱狂したりできる体験をつくっていける最高にエキサイティングな仕事です。他社との差別化を考えるのではなく、どうしたらもっと顧客が熱狂してくれるのかを考える。ぜひあなたも顧客とともに新たな体験をつくりだす共創マーケティングを考えてみてください。

 


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