2015/06/09

【対談】花王 本間充氏×トライバルメディアハウス池田紀行 ~Web担当者は社内を啓蒙する存在になろう~

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企業がWebを本格的に導入するようになってからおよそ15年。Web担当者はどう変わったのか。そしてこれからどうあるべきなのか。トライバルメディアハウス代表の池田紀行が、花王株式会社 デジタルマーケティングセンター デジタルトレード室長の本間充氏にお話を伺いました。

 

Web担当者は「Web担当」の枠を超えよう

池田:デジタルマーケティングにおいてWeb担当者は今後どうなっていくべきだと思いますか?

本間:僕はWeb担当者って被害妄想というか、ずるいと思うんですよ。テレビCMなどに比べて自分たちは日が当たらないところにいるって言い訳をしているところがあるんですよね。

でももう企業がWebを始めてから15年が経っていて、Webに関わる仕事をしている人も年齢とともに職位が上がってきているはずだから、会社や経営者に対してやっていることを説明していかないといけない。Web担当者が社長にプレゼンしたこともない、事業報告会にWeb担当者が一人も参加してない、というのは部門のメンバーにとっても悲しいことですから。

池田:Web担当者の問題というよりも、もはや組織論ですね。ただ、現状では多くの企業は広報部の下にwebの部署があるので、そのあたりのことは広報部マターだったりする。

本間:今後、広告主は、自分たちのコンテンツをネイティブアドと同等レベルに仕立てたいと思っているわけでしょ?だとしたら、普通の雑誌と同じように考えると、社長=編集長なわけで、編集長の対外的な見られ方を広報部が社長に指導しなきゃいけない。例えばファッション誌の編集長の服装がダサかったら問題じゃないですか。そのレベルで企業の広報部がやれるのか、という話だよね。

池田:結局、「餅は餅屋」で、部署ごとに自分たちの仕事の領域が明確に決まりすぎちゃっていますよね。

本間: Web担当者って、お客様のソーシャルリスニングやアクセスログや他の経路分析をしているのだから、テレビやWebという「媒体」別に組織が分かれていることの問題点を理解しているはず。それなのに、実際はWebの世界に閉じこもってしまっている。

本当はWeb担当者こそ、Webという囲いから出て行って、メディアじゃなくてお客さんとどこで出会うのか、っていうことを中心に考えなきゃいけない。

環境が変わった今、過去の延長線上に考えるんじゃなくて、自分たちが求められている仕事は何か?というところから改めて決めないといけないよね。今までその定義をしてなかったと思う。

池田:これはもう、部署ごとに自分たちのミッション・ステートメントをもう一回再構築し直すタイミングまで来てるんじゃないのか、ということですね。

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花王株式会社 デジタルマーケティングセンター デジタルトレード室長
本間充氏

 

自分たちはデジタル技術の最先端にいるということを理解すべき

本間: 現状のWeb担当者は、「そこにある切羽詰まった危機」を乗り越えているだけ。そうじゃなくて、仕事柄、最先端のWebやデジタル技術について社内で最も詳しい立場にいるはずだから、広告・宣伝の枠を超えて「Webを使った事業」を考えるべきなんです。

例えば「IoT(Internet of Things)ってかっこいいな」と思うだけじゃなくて、自分の会社でIoTがどう事業化できるかということを考える。花王で言うなら、家庭用洗剤「アタック」に同梱されている計量スプーンにBlueTooth機能を付けてデータをとれるようにしたら、洗剤を使う時間帯、汚れによる使用量の違い、交換のタイミングなどが分かるようになって、新しいサービスができる、とかね。

池田:確かに、Web技術のトレンドやバズワードには敏感ですが、事業という視点まで持っているという人は少ないですよね。

本間:経営者に対しては中長期計画を提案するべきですし、経営者がその提案が分からないというなら、その他の従業員もついてきませんよ。同じ会社である以上、経営者と社員は似たような価値観を持っているはずなので、会社の文化にあわせた事業化をきちんと説明できないといけない。花王の場合は、マスプロダクトを作っていて、社風としてもマスマーケティングが好きだから、マスマーケティングを否定せずに、その上でデジタルマーケティングをするというほうが話が早かったりします。

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株式会社トライバルメディアハウス 代表取締役社長
池田紀行

 

経営者も自分の思った通りにいかないことに気づいている

池田:とはいえ、企業はジョブローテーションもあるので、40代で初めて広報に異動になった方もいて、「広報とは」というところから勉強していたりする。そういう人がグランドビジョンを示せるのか?という構造的な問題も感じたりします。

本間:部署の全員がグランドビジョンを描く必要はなくて、1人か2人、将来を見据えて不安を感じているような人たちが、同じ部署のメンバーに伝えていかないといけないんですよ。そしてその上でさらに社長に訴えないといけない。

池田:そういう話をするときはまずどんな人達を集める必要があるのでしょうか。

本間:それを未来会議とするなら、未来好きのフューチャリストだけで集まってもダメでしょうね。トラディショナルなやり方で過去に成功体験を持っている人が3人、そして先を見通せるフューチャリストが3人、とかでしょうか。トラディショナルな人は過去に事業を成功させた人達なので、じつは論理性も高い。だから、フューチャリストが不安に感じていることを伝えることができれば、トラディショナルな人はちゃんと論理的に解釈してくれるはずです。

経営者も自分の思った通りにはいかないことに気づいています。70年代のマーケティングと違い、昔はマスに対して一種類の広告でよかったのが、今はそれが逆に嫌がられるようになっている。例えば自分の娘がスマホやLINEを使い始めていたり、コミュニケーションが変わってきていることはみんな普段の生活の中で実感しているはずなんですよ。

なのに、自分や身近な人がスマホを使っていることは知っていながら、「会社の事業としてスマホを活用するのはちょっと・・・」となってしまう。

自動運転車などの先進技術についても、知識はあっても「あれは遠い将来のこと」と思ってしまっていて、まったく自分ゴト化できていない。

池田:「お客様が求めること」と「会社としてやること」を同じに考えられない人も多いですね。単に自分の仕事が増えるのが嫌なのかもしれませんが。

本間:仕事が増えるのは、何かを変更するときだけなんじゃないでしょうか。花王でもサポートセンターがこれまで声を上げてこなかったサイレントマジョリティの悩みを解決しようという動きがあります。その場合、電話だけだともう古くて、お客様起点の新しいコンタクトポイントとしてチャットやLINEなどにも広げていく必要があるんです。変更の過程では、過去のやり方を新しいやり方を両方やらないといけないから、一瞬仕事は倍増するけど、新しいやり方がスタンダードになれば、仕事量も定常状態に戻る一時的なものだと思います。

 

2-3日、通常業務から離れて、自分の仕事の本質を考えよう

本間:重視されるものが「モノ」から「コト」に変わって、自動車もエンジンに注目する人よりも、移動手段として簡単に運転できることを気にする人のほうが多いですよね。だからGoogleの自動運転が話題になるんです。

花王も洗剤という「モノ」のメーカーではなくて、汚れを落とす「コト」のメーカーになるべきだと思います。洗剤に含まれる成分の話をしてもそれをすごいと思うのはごく少数で、自動車メーカーがうちのエンジンすごいと言っているのと一緒です。

池田:いや~、本間さんの話はセス・ゴーディンと同じで20年先を見ていますね。どうしてもWeb担当者は明日、あるいは今期使えるWeb技術のほうに目がいってしまうんですよね。

本間:それは広告主の罪でもあります。Webは安くコンテンツが置けるから、どんどんコンテンツを置いていたけど、じつはお客様に下手な作文を読ませているようなもので、そもそも本当にそのコンテンツが必要なのか、2−3日、通常業務から離れてじっくり考えたほうがいい。

Webって本当に必要なのか、誰にどんな価値を提供しているのか、5年後10年後のWebサイトがどうあるべきかを考えて、その上で、今やることを検討したほうがいいと思います。

広告主もお金を払うならその価値を理解するべきですし、自分が業界を動かしていることに気づかないといけないですね。

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<インタビュー・原稿執筆協力: 深谷 歩(株式会社深谷歩事務所 代表取締役)>

 

 

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