2015/03/12

「インサイト」はどうやって見つけるの? 生活者を理解する共創コミュニティの役割を考える

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※本記事は、当社共創マーケティング部 宮本昌尚によるMarkeZineへの寄稿記事を、MarkeZine編集部許諾の元、転載しています


注目が集まりつつある「共創マーケティング」とは何か、事例を交えて紹介する本連載。5回目は共創マーケティングの重要な目的「生活者を知る・理解する」がテーマ。生活者のインサイトを得るために有効な共創コミュニティについて、キリンビール、富士通、伊藤ハムの事例と共に紹介します。

 

生活者の理解は調査部だけの仕事ではない

これまでの連載では、商品化の意思決定を共創する西友の「みんなのお墨付き」、商品を共創する伊藤ハムの「ハム係長の商品開発部」を紹介しました。どちらの施策も生活者が欲しいと思うものを知る、という意味では同じ軸を持っています。今回は、共創マーケティングの重要な目的である「生活者を知る・理解する」をテーマに、先進企業がどのように新しいインサイトを発見しているのかを紹介します。

マーケティングを「生活者に価値を提供する活動」と考えると、マーケティング活動は本来、「生活者に価値が届いたか」という小さな疑問の積み重ねです。商品開発にはじまり、広告、ウェブサイト、ソーシャルメディアへの投稿などマーケティング担当者が作ったもの全てにおいて、どのように生活者に届いたのか。言い換えると、生活者が「自社の提供している商品・サービス・コミュニケーションから何を感じ、何を受け取ってもらったかを理解することが、全てのマーケティング活動のベースです。

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生活者の理解はマーケティングの戦略部分に関わります。誤った理解に基づいて、商品、コミュニケーションを作ると、全ての施策が効果を生みません。しかし、生活者の理解がマーケティングのベースとなるにもかかわらず、これまでは直接的に生活者を知ることは困難でした。

例えば、あるブランドが好きで購入量も多いコアファンに対して、商品の魅力を聞きました。すると「デザインがかわいい」という返答が返ってきました。それを聞いた、マーケティング担当者は驚きを隠せません。実は、その商品はCMなどの広告で何度も機能や製法について伝えてきました。「当然、コアファンにはそのメッセージが届いているだろう」と担当者は予想したのです。しかし、実際にコアファンが感じている魅力は機能や製法にはなかったのです。もちろん、一部のコアファンの意見だけでメッセージを変えるかどうかは、検討が必要です。しかし、コアファンにさえ届かないメッセージは変える必要があるのではないか。そういった気付きを担当者は得ることができました。

上記は極端な例ですが、もし「現在のメッセージは生活者に届いていないのではないか」という疑問がすでに企業側にあったならば、リサーチを行い、上記の発見を行うことができるでしょう。しかし、そもそも疑問に気づいていない、もしくは、気づいていてもリサーチ予算をかけて調査すべき課題と認識していない限りリサーチは実施できません。

これまで、企業が生活者のことを手軽に知ることは困難でした。生活者を知るためには、会場に生活者を集めてグループインタビューをしたり、アンケートの調査票を作って質問を投げかけたりする必要がありました。しかし、デジタルとソーシャルメディアの発展などにより、オンライン上で企業と生活者が対話し、直接的にコミュニケーションをとることが手軽にできるようになりました。調査部だけでなく、あらゆるマーケティング担当が生活者を知ることができるようになったのです。

 

生活者を理解するために、オンラインでの直接対話を

生活者とオンライン上で直接対話できるようになったのは、ここ5年~10年ほどの最近の話です。そのため、直接対話を武器として活かす取り組みは始まったばかりだといえます。生活者との直接対話により新しい発見を得るには、オンライン上に共創コミュニティを構築する必要があります。共創コミュニティには次の3つの特徴が必要です。

1)アンケートや掲示板があり、コミュニティ参加者の意見を集められる
参加者の意見を集めるには、アンケートのような企業側からの質問に答えてもらうケースがあります。また、掲示板のように参加者間・企業と参加者同士でディスカッションすることで意見を集めたり、対話の中から新しい発見を得るケースもあります。

2)会員登録があり、継続的にメールなどで連絡を行える
共創コミュニティでは参加者との人間関係を構築することで、意見を言いやすい環境を作ります。そのためには、継続的にコミュニケーションできる状態が必要です。

3)コンテンツの出し分けができることで、複数のプロジェクトを並行して実施できる
質問・対話する内容によって、「誰に聞きたいのか」は異なります。特に、オンライン上でディスカッションする場合、盛り上がりやすいのは100人程度です。Facebookの平均友達数も100~150人と言われますが、お互いの人間関係を維持するには限界があります。コミュニティ参加者は多いほうが様々な意見は聞けますが、お互いを理解したうえでコミュニケーションできる人数に制限があります。そこで、コミュニティの中でコンテンツを出し分け、この質問はこの100人に、この質問はこの100人に、と設定することで盛り上がった状態を維持できます。

共創コミュニティを作ることで、下図のようにマーケティング施策全体の中で、ふとした疑問の質問や小さなテストマーケティングなど、複数のプロジェクトを並行して実施することができます。そして、気づいていない課題を発見し、生活者と共にマーケティングを行えるようになります。この「ふとした疑問」の中に新しい発見のタネが隠れている場合もあります。「今では当たり前のように前提になっているが、個人的に疑問に思っていること」を、質問を作る上で参考にします。

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 あらゆるマーケティング・プロセスで
「生活者を知るため」に活用できる共創コミュニティ

 

生活者理解を促進する、共創コミュニティ4つの特徴

商品やサービスのファンを集め、継続的に運営している共創コミュニティにおける生活者理解は、他のリサーチ手法と比較して、次の4つの特徴があります。

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共創コミュニティの特徴

特殊な意見を集めやすい

通常のリサーチでは一般的な人(あるサービスに特別な思い入れの無い、フラットな人物)を集めます。一方、共創コミュニティでは商品やサービスのファンなど尖った参加者を集めることが一般的です。20%の消費者が売上の80%に貢献していると言われています。この20%の消費者の意見をマーケティングに活かすことができます。ファンは商品やサービスに対する強い思い入れを持っています。そのため、1つの質問に対して2,000文字を超える回答を寄せたり、企業側も予期していなかったような特殊な意見を提供してくれることがあります。

また、このようなファンの声は企業側の担当者の熱意を高める効果もあります。クレームや苦情の問い合わせなどのネガティブな意見に比べ、「この商品を買って良かった」「この商品を使って楽しいです」といったポジティブな意見は社内で共有されにくいものです。共創コミュニティでファンの声を集めることで、インナーブランディングにも役立てることができます。

建設的な意見を集めやすい

共創コミュニティでは継続的にコミュニケーションを取っていくため、参加者との間に人間関係が構築されます。このため、調査を行う際も単純な否定意見ではなく、「どういうシーンやケースならいいと思う」といった建設的な意見が集まりやすい傾向にあります。

例えば、キリンビールは共創コミュニティ「カンパイ会議」を使い、低アルコールビールの「オフホワイト」に関する調査を行いました。低アルコールビールはその名の通り、アルコール飲料に不可欠の要素であるアルコール度数が低いため、一般的な調査では否定的な意見が出やすい傾向があります。しかし、「カンパイ会議」を使った調査では、参加者が協力的に参加してくれるため、建設的な意見が集まりました。

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 カンパイ会議で集まった商品に対する意見

加えて、共創コミュニティの参加者をグループインタビューやオフ会に招けば、オンラインと同様にコミュニティでのニックネームで対話をすることができます。そのためリアルイベントの初対面同士でも、身近な気持ちで意見を出してもらうことが可能です。

生活者の立場をリアルに理解できる

共創コミュニティは生活者の立場をリアルに理解することができます。継続的に生活者の意見を聞くことができるため、意識変容のあった時点からさかのぼって、「要因は何か」「どのような刺激を与えれば変容が起こるのか」などを検証できるのです。また、コミュニティの運営・維持には費用が必要ですが、コミュニティの中で何度質問をしても追加費用は発生しません。このため、企業側は気軽に何でも質問ができ、生活者側はスマートフォンなどから好きな時に回答できる。これは、共創コミュニティの大きな特徴です。

BtoBの事例ですが、富士通はクライアント企業とのイベントと共創コミュニティ「Innovation Farm」を通して、ニーズの見える化を行っています。イベントなどを通して最先端のICTをクライアントに体験してもらい、それを使ったアイデアを共創コミュニティで話し合うことでプロトタイプを作っています。

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 イベントにおけるディスカッション風景

クライアントに突然「ニーズは何ですか?」と聞いても、なかなか答えは出てきません。そうではなく、ドローンなどの最先端の技術を見せて、「これを使って、どんなことができたら面白そうですか?」と質問することで、様々なアイデアが浮かんでくるのです。そして、プロトタイプを作る中で具体的に何を実現したいのかが明確になり、クライアントニーズを把握することができるのです。

エバンジェリスト育成とクチコミによる推奨効果

コミュニティ参加者に質問してその結果を基にマーケティングが行われていることがわかると、コミュニティ参加者はエバンジェリストになります。前回の連載でも紹介した伊藤ハムの「ハム係長の商品開発部」では、商品を共に作るプロセスで得た参加者からの意見をウェブに商品のクチコミとして掲載しています。商品を共に作った熱量とともに書かれたクチコミは、通常のクチコミ以上の推奨効果があります。

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 ウインナーの共創に参加したメンバーのクチコミ

加えて、共創コミュニティにコンテンツを用意して企業側が感謝を伝えることで、参加者に「企業活動に貢献した」と実感してもらうことができます。

 

生活者の立場に立ったマーケティングを

企業のマーケティング活動の中で重要性は認識されながらも、これまで深く理解できなかった生活者のことが、共創コミュニティを使うことでわかるようになります。生活者にとっても、自分の意見を受け取ってマーケティングを進めてくれる企業は親近感を抱きやすいでしょう。そして、関係が深まることで「自分のブランド」として認識してくれるようになります。共創コミュニティで生活者を知ることで、生活者の立場でマーケティングを行うことができるのです。

  


 

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