2015/02/02

ハム係長がファンと商品を共創! 伊藤ハムが進める「新たな関係」づくり

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※本記事は、当社共創マーケティング部 宮本昌尚によるMarkeZineへの寄稿記事を、MarkeZine編集部許諾の元、転載しています


注目が集まりつつある「共創マーケティング」とは何か、事例を交えて紹介する本連載。4回目は伊藤ハムの共創プロジェクトを紹介します。人気キャラクター ハム係長を擁する同社が抱える課題と、その解決策として進められているのが「ハム係長の商品開発部」と「ハム係長のセレクト・キッチン」です。

 

人気キャラクターハム係長の新しい挑戦

ハム係長といえば、Facebookページで人気を誇るキャラクターとしてご存知の方も多いでしょう。現在、伊藤ハムでは新しいチャレンジとして、ハム係長がコンシェルジュとして商品を紹介するECサイト「ハム係長のセレクト・キッチン」を開始しています。さらに、ファンが伊藤ハムのパートナーとして商品開発に参加するプロジェクトも発足、新しいブランド作りと信頼作りに取り組んでいます。

今回は、このプロジェクトを推進する天津学氏、およびハム係長としてコミュニティを運営する関澤昌弘氏に、プロジェクトにかける思いについてお話を伺いました。

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 伊藤ハム株式会社 加工食品事業 事業戦略統括部 家庭用企画部 マーケティング推進室 担当課長 天津 学氏(左)、
同社 加工食品事業本部 事業戦略統括部 家庭用企画部 第1マーケティング室 プロダクトマネージャー 関澤 昌弘氏(右)

 

SNSで培ってきた関係を活かして新しいECサイトを作る

 ――ECサイト「ハム係長のセレクト・キッチン」を始めた理由は?

天津氏:2011年より、伊藤ハムではFacebookとGREEでハム係長というキャラクターを立てて、ユーザーとコミュニケーションしてきました。そこで培ったユーザーとの密接なつながりを軸にした取り組みをしたいと考え、ECサイトを運営することにしました。

すでに楽天市場などには伊藤ハムのECサイトがありますが、それは伊藤ハムというブランドで運営されているECサイトです。セレクト・キッチンでは商品をハム係長がおすすめする、というコンセプトにすることで新しい可能性を生み出しています。

そもそも、生活者が商品を選ぶ時に「伊藤ハムだから買う」とならないことが課題でした。商材の特性上、他社との差別化が難しいのです。どうしても食材の1つだという認識をされがちで、生活者が価値を見出しにくいのだと思います。しかし、Facebookでのユーザーの関与度は違います。ハム係長が「疲れた ぷふぅ~っε=(公)」といった投稿をすると、約2,000人の方が「いいね!」してくださり、しかも「大丈夫ですか」というような言葉も頂けます。ハム係長でつくってきた生活者との関係性は新たなきっかけになり得ると考えました。

 

生活者との共創プロジェクト「ハム係長の商品開発部」

――セレクト・キッチンと、生活者と商品開発を行う「ハム係長の商品開発部」の位置づけは?

天津氏:生活者と一緒に開発した商品は、セレクト・キッチンの目玉商品になると考えています。現在、共創している商品は、「幸せを感じるウインナー」です。ウインナーは朝ごはんやお弁当などで食べられることが多いですが、夕食に家族で一緒にウインナーそのものを食べるシーンを商品とともに開発したいと思っていました。

「商品開発部」という名前はハム係長という立ち位置から連想しました。“係長”という部分がいかにも会社っぽさを持っています。それならば、参加してくれる生活者の方も会社の一員にしてしまおうと考えました。ですから、参加者は外から来たお客さまではなく、商品開発部の「部員」。我々と一緒に商品を開発していくパートナーという位置づけです。部員の方々にはネット上のコミュニティで意見や体験を書き込んでもらったり、オフラインの試食会に参加してもらうなど、商品開発に実際に加わって頂いています。

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「ハム係長の商品開発部」でのウインナー開発の流れ

――「ハム係長の商品開発部」に関わっている部署、予算などはどうされているのですか?

天津氏:マーケティング推進室の予算として組み入れています。部署は共創企画のプロジェクトチームという形で、調査・生産・商品開発などのメンバーに関わってもらっています。全員、通常の業務にプラスの形で担当してもらっていますが、商品作りに関連する複数の部署が関わることで、それぞれがプロフェッショナルの考え方を活かしながら製品に反映させられる体制をひいています。

例えば調査担当者が関わることで、アンケートを通じた潜在的なニーズの発見や、意見を引き出すワークショップの実現ができています。また、商品開発の担当者が関わることで、試作品のイメージを練り上げることができます。この取り組みの特長は、試食会で出た参加者の声を直接拝聴することで、開発・改良へダイレクトに反映できていることですね。

 

Facebookとは性格が異なるコミュニティ、盛り上げるには?

――Facebookと商品開発部の違いはどこにありますか?

関澤氏:Facebookは、ハム係長というキャラクターを通じて親近感を醸成し、共感していただく展開をしています。一方、商品開発部は商品を開発するというテーマがあります。また、クローズドのコミュニティなので、コミュニケーションがさらに深いです。

商品開発部で交わされるやりとりは、専門性が高く真面目なものが多いです。参加されている方にはほとんど見返りがないにも関わらず、自分の体験や想いを伝えてくださるなど、非常に積極的です。集まっている方はロイヤルティの高い方、エバンジェリスト方々に集まっていただいていると感じます。

だからこそ、その中でいかに楽しんでもらうかというアイデア作りはFacebook以上です。特に、ハム係長の持ち味は、つい支えてあげたくなる独特のゆるさです。キャラクターの良さを活かしつつ、コミュニティの熱さを保つためにはどうすれば良いかなど、日々いい意味で試行錯誤を繰り返しています。

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――商品開発部のコミュニティでは、コメントに対して全て返信するという運用ですね。何故ですか?

関澤氏:Facebookでも同様のスタイルで運用してきました。そこに価値があると思っています。商品開発部では、こちらからお題を出してそれに対してコメントしてもらうというスタイルで、どういったディスカッションを展開するのかが肝です。当初は、固いテーマばかり連続して投稿してしまい、見ている方を疲弊させてしまったこともあります。現在はやわらかい話と堅い話は8:2くらいの割合ですね。

 

生の声には、調査データを超える力がある

――すでに部員の皆さんと試食会を開催されたということですが、いかがでしたか?

天津氏:弊社では、これまでも社外や自社のモニターの方々を通じて商品調査を行っています。ですが、今回の試食会のように生活者の皆さまが我々の立場に立って一緒に取り組んでもらうというのは、初めての試みでした。

関澤氏:試食会でのグループディスカッションは各グループとも盛り上がり、話が尽きませんでした。ホワイトボードを使って議論するなど、社内でもなかなか見られないくらい白熱したものでした。2回目の試食会では、すでに社員と部員が顔なじみといった様子でした。会えばすぐに自然に会話がはじまるなど、プロジェクトチームとしていい雰囲気が作れていました。

――参加者のモチベーションが高いのですね。

天津氏:そうですね。そのためか、情報も非常に有意義な集まり方をしています。生の声には、通常のKPI・KGIといった数値では抽出できない情報があります。調査ではサンプル数が多いほうがいいといわれます。ですが、深く濃いインサイトが得られるのであれば、サンプル数が限られていても価値があると体感しています。

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インターネット会議でも様々な意見が集まった

――どのような場面で、お客さまもプロジェクトを楽しんでいると感じますか?

天津氏:試食会に参加された方から「今日は娘と、“お母さんが作る(開発する)ウインナーってどんな味だろうね”という話をしながら来ました」とおっしゃって頂きました。伊藤ハムの商品を一緒に作ることに、期待して頂き楽しまれていることがわかります。

それから試食頂いたときの笑顔ですね。生産・商品開発に携わる者として、お客さまが喜んでいる姿を直接見ることはモチベーションが上がります。その点で、この取り組みはスタッフに対してのインナーブランディングの効果もあると思いました。

――商品開発部のグッズもあるそうですね

天津氏:今回の企画に参加してもらう特典などは表立っては伝えていません。とはいえ、まったく無報酬で企業の都合にご協力頂くのですから、なんらかの形で報いたい。そういった想いから、試食会に参加頂いた方にはささやかなグッズを用意しました。

1つは会員証のバッジです。正直にお話しすると、会員証はもらって嬉しいものか当初は悩みました。ですが、実際に差し上げたところ写真を撮ってくださるなど、とても喜んで頂けました。また、マグカップとエプロンも用意しました。これらは日々の中で使ってもらえるものを意識しています。

 

ソーシャルメディアで培った関係を次のステップへ

――今後の展開の予定は?

関澤氏:組織・体制も含めて、これからどうしていくかを検討しているところです。現在、お客さま同士で商品を薦める流れが生まれはじめています。例えば、ある商品について「気になるけど、量が多くて食べきれないのではないか」と購入を迷っている方がいました。その際、他のユーザーさんがコメントで後押しをしてくださったおかげで、最終的にご購入頂くことができました。美食家や料理人というわけでもない普通の生活者が、ハムやソーセージを他人に推奨する。よく考えると、これはすごいことだと思います。

ソーシャルメディア上でハム係長を通して培ってきたファンがいて、そこからコミュニティでさらに深い関係を構築して、ECに結びつくという一連のプロセスを経て、いま小さい芽が出ています。育てるには時間がかかるかもしれませんが、次のステップにつなげられるようにしていきたいです。

――ハム係長という存在の強さを感じますね。

関澤氏:セレクト・キッチンを立ち上げる際に、ハム係長の立ち位置を再考しました。結論としては、皆さまと伊藤ハムをつなぐコンシェルジュに着地しました。ですが、表現としてはちょっとかっこよすぎる気もします。実際には、商店街の八百屋のおやじさんのような身近で温かいイメージに近いです。

天津氏:「安いから買う」ではなくて、「ハム係長を信頼しているから買う」という図式は、商売として非常に強みだと考えています。そこに集まるお客さまは、他の人におすすめしてくれるアンバサダーといえます。ですが、一緒に商品開発もしているので、より深いパートナーのような関係ですね。

ユーザーと企業の信頼関係構築は、他の会社がやっていることをそのまま真似しても駄目だと考えています。自分たちなりのポジションを作って、そこから信頼を築いていく必要がある。如何にお客さまと向き合うかということが大切です。ですから、私達は商品開発部の部員という「伊藤ハム側の人」になって頂きました。

3年間ソーシャルメディアを運営してきた蓄積は、ノウハウというよりも財産です。その財産を次のステップにつなげるのが新たな課題ですね。会社全体として「伊藤ハムっていいよね」といってもらえるようになりたいと考えています。そのためにハム係長がフックになって、企業と生活者の新しい関係性、信頼を築いていけるのではないかと思います。

 

「企業のマーケティング活動」に一層重要になるファンの存在

企業が生活者との「エンゲージメント」を図ることは、Facebookなどのソーシャルメディアマーケティングと共にここ数年で普及しました。多くの企業が公式アカウントを開設し、生活者との直接対話を通してファンを醸成しています。

いまハム係長が取り組んでいるのは、このファンとの関係性を次の段階に展開させることです。共創の取り組みによって商品に意見を伝えたり、商品をすすめてくれるファンが生み出されているのです。エンゲージメントを高めたファンの存在が、企業のマーケティング活動にとってよりかけがえのない存在に変わって来ています。

  


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