2017/02/20

【熱狂ブランドサミット 2016 レポート(2)】ヤッホーブルーイング井手社長登壇! 「熱狂はこうして生まれる! 『よなよなエール』大躍進の秘密」

こんにちは! 熱狂ブランド戦略の水先案内人こと、沸騰ナビゲーターの井手です。

【熱狂ブランドサミット 2016 セミナーレポート】の第2弾は、「よなよなエール」などのクラフトビール製造・販売を行う株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長 井手直行氏による「キーノート2 熱狂はこうして生まれる! 『よなよなエール』大躍進の秘密」をお届けします。

キーノート1で、池田が「コモディティ化の波や価格競争の渦に巻き込まれずにブランドの中長期的な競合優位を獲得するためには、『どうすれば売れるか』から卒業し、『どうすれば顧客は熱狂するか』を真剣に考えるべき」とお話ししましたが、これを実際に実行しているのがヤッホーブルーイング(以下、ヤッホー)です。私も、ヤッホーが主催するイベントに何回か参加させていただきましたが、ファンの皆さんの熱量には毎回驚かされますし、社員の皆さんのホスピタリティやファンへの愛情には感動を覚えるほど。本当にスゴイんです、熱いんです!(笑)

「ビールに味を! 人生に幸せを!」という企業ミッションを掲げ、熱狂的な社員とファンに囲まれ快進撃を続けるヤッホー。熱狂ブランドサミットでは、その大躍進の裏側をたっぷり語っていただきました。それでは、どうぞ!

▼ビール市場に新しい風を、そして顧客にささやかな幸せを届けるために
「大手ビール会社がシェアの大半を占め、画一的な味しか存在しない日本のビール市場に新たなビール文化を創出し、顧客にささやかな幸せを届けたい」、そんな思いから「ビールに味を! 人生に幸せを!」という企業ミッションを掲げ、1996年に設立したのがヤッホーブルーイングです。
看板製品は「家庭で飲める手ごろなエールビール」をコンセプトにした「よなよなエール」。これまでのビール市場にはなかった斬新なネーミングとパッケージデザイン、そして独特の香り・味わいは、他社製品とは一線を画す個性的な製品として皆さまに長くご愛飲いただいています。

 

▼地ビールブームの終焉による下り坂から一転、現在は12年連続で増収増益に
地ビールブームの影響もあって創業時は好調な滑り出しをみせていたのですが、99年をピークにブームが収束し始めると、その後の売上は下降の一途をたどることになります。これは我々だけでなく、全国の地ビールメーカー280社すべてにおいてあてはまる状況でした。

なぜなら、地ビールに悪いイメージがついてしまったから。

地ビールは値段が高い味が個性的すぎる、そしてブームにのってアマチュアのような方々がビールを造り始めてしまうケースが多発し、その結果「地ビール=おいしくない」というイメージがついてしまったんですね。
よなよなエールは、発売当初も今も変わらず1缶248円(税抜)とクラフトビールのなかでは安い価格設定でしたし、世界的にも有名な品評会で金賞を受賞した経験もあったので味には自信を持っていたのですが、地ビール全体のイメージが低下するなかでは、どうやっても抗うことはできませんでした。最終的には酒屋さんにも小売店にも製品を置いてもらえない……という状況に。それでもビールをお届けしたい一心で始めたのが、楽天市場での販売でした。
楽天市場に出店してからは売上が伸びはじめ、おかげさまで現在では12年連続で増収増益を続けています。実は、ビール市場はこれまでの20年間縮小し続けているんです。そのような状況下で、急成長している国内企業はヤッホーだけ。では、何が成功の要因なのかをお話ししていきたいと思います。

▼お客様の支持なくして、製品と会社の成長はない!
当たり前の話のように聞こえるかもしれませんが、私たちはファンの皆さんのことが大好きで、とても大切に思っています。なぜなら、店頭からヤッホーのビールがなくなったときもファンの皆さんはずっと私たちを支持し続けてくれたから。また、インターネットでの販売を始めてからは電話やメールでファンの声を直接聞くことが多くなり、ヤッホーのビールを楽しんでいただいている様子を想像しながら、日々手ごたえを感じています。しかも、お客さまはお金を払って製品を購入しているにも関わらず、私たちに「ありがとう」と言ってくれる。自分のやっていることが世の中のためになっている、人を幸せにできているんだ! と思える瞬間です。

そして、お客様の声は、私だけでなく社員のモチベーションも上げてくれます。お客様の支持なくして、製品の成長はないお客様の支持なくして、会社の成長はないと思っています。

 

▼100人いたら1人か2人しか選ばないような「いばらの道」をあえて行く
戦略論の大御所 マイケル・ポーターは、「戦略とは競争上必要なトレード・オフを伴う一連の活動であり、企業の活動間のフィット感(適合性)をつくり出すことが大切」であると言っています。つまり「トレード・オフ」は、何かをやろうとしたら何かを捨てること。右を取ったら左を捨てる、両方のいいとこ取りはダメということです。そして「活動間のフィット感」は、すべての活動はつながっていて相乗効果を伴うことを指します。

この戦略論に則り、私たちは常にトレード・オフを行い、活動間のフィット感をつくり出すことを考え、経営を行ってきました。トレード・オフをするときは確率論的に100人いたら1人、2人しか選ばないようないばらの道を、あえて選ぶようになった。そんなトレード・オフを2回繰り返したら、競争する相手はもういません。こうして独自進化を遂げ、誰もマネできない会社になったのです。

 

▼短期的な売り上は捨てて、お客さまに喜んでもらうことを選択
私たちが、ファンの皆さんを喜ばせようと思って実施した例をいくつかご紹介します。

2008年の楽天市場 ショップ・オブ・ザ・イヤーの授賞式では「よなよなエール」のダンボールと空き缶で5時間かけて作ったスノーボードを小道具として携え、スノーボーダーの仮装をして登場しました。仮装の写真を見たファンからはたくさんの反応をいただけたので満足していたのですが、授賞式の後にふと「このスノーボードを欲しがるファンもいるかも……?」と思い立ち、シャレでオークションを開催してみたんです。すると、予想以上に入札が殺到し、最終的には驚くほどの金額で落札されることに! 落札してくださった方には、スノーボードと一緒に、お礼も兼ねてビールも数箱もお送りさせていただきました(笑)。ちなみに、私たちは「ここぞ!」というときは、お客様に喜んでもらうためにも必ず仮装をしています。

また、「よなよなエール」は夫婦でのファンも多いことから「夫婦で幸せ50年」という企画も実施しました。これは、50年分の「よなよなエール」をまとめ買いすれば、50年間毎月お届けするというもの。50年分を計算すると定価750万円なのですが、そこから300万円を値引きし、450万円で1組にその権利を譲渡するという内容でした。現金一括前払い、権利を他人に譲渡できない、といった条件もあり結果的には売れませんでしたが、たくさんのお問い合わせをいただきましたし、インターネット上では大きな話題になりました。

どちらの企画も多くのお問い合わせをいただいたので対応に非常に労力を費やしましたが、売上には全くつながっていません。短期的な売り上げを捨て、お客様に喜んで(楽しんで)もらうことだけを目的にしているという点では、トレード・オフの話にもつながります。両方取りはダメ。ただ、結果的にはブログやクチコミで多く取り上げていただけたことで、かなりの宣伝効果がありました。

 

▼ファンと一緒になって、魅力を伝える
お客様に喜んでもらうために、ファンイベントも開催しています。たとえば「超宴(ちょううたげ)」、これは1,000人のお客様が北軽井沢のキャンプ場に集って一夜を共にするイベントです。何がすごいかというと、入場料も宿泊代も必要ですし、会場までの交通費がかかるにも関わらず、参加したお客様の満足度調査(7段階評価)は「非常に満足」「満足」を合わせると95%しかも70%以上の方が「非常に満足」と回答してくれたこと。7段階評価での「非常に満足」は、感動した・こりゃ驚いた・人に言わなきゃ、というときにしか選ばないですよね。

しかも、初めてヤッホーのイベントに参加したという人が42%もいて、なかには「このイベントで初めてよなよなエールを飲んだ」という方までいらっしゃいました。あとから分かったのですが、ありがたいことに熱狂的なヤッホーファンがお友達を連れてきてくれていたんですね。ファンの方を喜ばせようと思って私たちも一生懸命だったわけですが、ファンの方もお友達を楽しませようと思って一緒によなよなエールの魅力を伝えてくださっていたのです。

 

▼社員の熱狂からすべては始まる
こうした取り組みを成功させるためには、社員の熱狂が必要であり、社員全員が同じ志を持って物事を進めることがとても大事です。私たちのいう志というのは「ビールに味を! 人生に幸せを!」という企業ミッションですね。社員全員がこのミッションをしっかりと腹落ちさせ、同じ方向を向くことが重要。そして、ミッションを体感するのに一番適した手法はファンと触れ合うことだと思っています。

先ほどの超宴では約70人の社員が自主的に参加し、汗水たらしながら準備・運営をしてくれました。イベント終了後に社員アンケートをとったのですが「昔から応援してくれていたお客様と直接話ができて非常にうれしかった」「感動して2日間泣いていた。もっともっとパワーアップさせて、お客様もスタッフも喜んでくれるイベントにしていきたい」といった感想を書いてくれました。仕事という枠を超えて、ミッションを体感する場になっていることが分かると思います。

意図的に「ファンを喜ばせよう、楽しませよう」とするのではなく、まずは自分たちが熱狂する→その熱量が伝わってファンの方も熱狂してくれる→ファンの熱狂に触れて、初めて社員も心から熱狂することができる、そんな循環をつくり出すことが大事だと考えています。いまでは、社員みんなが自主的にお客様を喜ばせる活動に取り組んでくれるようになりました。私はほとんどノータッチです。これは本当に素晴らしいことですよね。

 

▼クレイジーと笑われても良い。それでも私たちは「よなよなエール」でファンを幸せにするのだ!
本日ご紹介したように、私たちはお客様のことを喜ばせようといろいろなことに取り組んでいるわけですが、それは「ビールを中心としたエンターテインメント事業を行っている会社」だと捉えているからなんです。世界広しといえども、このようなビール会社は世界中でも私たちぐらいなのではないかと。そして、これが私たちの最大の差別化ポイントでもあります。差別化は他社が躊躇するぐらい行わないと生まれません。トレード・オフの話に戻りますが、どの企画も大変な準備をかけて実施していますが、直接的な売上はゼロです。短期的な売上は捨てています。超宴は赤字ですし、普通の会社なら稟議も通らないと思います。けれど、お客様が喜んでくれれば、売上は必ず後からついてくる。実際、ついてきています。

最後になりますが、いま私たちは世界平和を目指しています。さまざまな取り組みを通して、社員も、ファンも、取引先も幸せになっていることに気付いたんです。ということは、自分たちの活動が広がれば、幸せの範囲も広くなって、いつか世界を平和にできるかもしれない。最近では、社内で「ノーベル平和賞を目指そう!」という声も出てくるようなりました。クレイジーと笑われても良いそれでも私たちは「よなよなエール」でファンを幸せにするのだ! この言葉を胸に、これからも活動を続けていきます。
本日はご清聴ありがとうございました!

 

以上、ヤッホーブルーイング 井手社長の講演レポートをお届けしました! 井手社長は代表取締役のほかに「よなよなエール愛の伝道師」という肩書きも持っていらっしゃるのですが、その名の通りの情熱溢れる素晴らしい講演でした。

さて、次回のレポート第3弾では、アシックスジャパン、ポーラ、ヤマハ発動機のブランド担当者様をお迎えしたパネルディスカッション「顧客を感動・熱狂させる熱狂ブランドづくりとは?~注目企業のキーマンによるブランド戦略座談会 Part1~」をお届けします。お楽しみに!

 

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